蜜白玉のひとりごと
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電車の中で本を読んでいて、 自分の髪型の変遷を男がらみで思い出すことについて云々というところがあり、 思わず吹き出しそうになった。 電車の中だけに、笑いをこらえるのに一苦労した。 それはこういうこと。
・・・長かったのを切った、というんなら、これはやっぱり失恋かなって、あたしたちの世代の女は考えるのよお。(中略)切るのは、男から離れる時、伸ばすのは、男と接近する時である、ということに、確かな法則性があることは、姉が女子高校の先生をしていた経験からも、確実性があると言っていたと断言するから、そうかなあ、しかし、男とヘア・スタイルは関係ないですよ、と、また言うと、そうかしら?よく考えてごらんなさいよ、と、うながされてしまい、そんなこと急に言われたって、(中略)自分のヘア・スタイルの変遷―三十年ものだ―なんか、すぐには思い出せないし、ましてや、それを男がらみで想起しろなんて言われても、ぴんと来ることなんかありませんよお・・・
『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』 金井美恵子・著(朝日新聞社)より
昨日、髪を切った話をしたばかりだったので、奇遇というかなんというか。 世の中って、ふとしたところでつながる、おもしろいほどに。
夜は『噂の娘』刊行記念の講演会にでかける予定だったので、 気分を盛り上げるために彼女の本を読んでいたのだ。 年末からずっと金井美恵子ばかり読んでいて、 こんなにおもしろい話を書く人は一体どんな人なんだろう、 話のセンテンスもやっぱり文章と同じで長いのかな、きっとそうなんだろうな、 などと勝手に思っていた。
金井さんは小柄でさばさばした感じの人だった。 そして、毒舌。 これが気持ちよくて、気持ちよくて。 他人の悪口なんだけど、意地悪く聞こえないのはなぜだろう。 あまりにもあっけらかんとしているからか。
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