蛍桜

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一歩後ろの世界

ぼやけている世界。真っ白なのか、何も見えないのか、分からない。
足元には、デコボコした透明の岩。
不揃いに並んだその岩を、裸足で歩いていく。
透明なその岩に、自分の姿は映らない。影もない。
ただただ、氷のように冷たく、たまにほのかな水色に見えることがあった。
氷が水色をしているだなんて、なんて陳腐なんだろう。

ひとつの足場に留まっていると、足場が溶けていく。
それどころか足が凍えて、感覚がなくなってしまう。

だから必死に。だから前に。

その先には何も無い。いや、無いように見えるだけで。
あの白色の先には、何かがあるかもしれない。
あのぼやけた先には、何かがあるかもしれない。

それがただの希望だったとしても。
期待だったとしても。
何も無い、だなんて言い切れない。


一生懸命、なんて言葉あまりにもありきたりだけど、
とにかく前へ、前へと進んでいるのに
足はどんどん冷たくなって。
岩場はどんどん溶けていって。


この岩場の上に座り込んで、
一緒に溶けるのを待つのもいいのかもしれない。

歩き続けなきゃいけない、だなんて
なんの美学だろう。

いつかきっと太陽が昇るはず、だなんて励ましは意味が無い。
この世界には、太陽という概念さえ、ないのだから。


この世界を産んだのは、きっと私。
誰とも関わりたくなくて
だけど立ち止まりたくなくて
歩き続ける理由がほしくて
全ての感情を消して
ただ綺麗な世界で。

だけど、結局、中途半端なんだ。

ほんとうなら、何も言わず、消えたいのに
実際は、私は大丈夫だから、とか
私が居ない方がいいよ、とか
綺麗事を言って消えるんだろう。
消える直前まで、
誰かの必要とされることを望んでしまうのだろう。

全てに絶望したと言っても
そうやって言うこと自体が
希望を探しているんだろう。


だからあのぼやけた世界がぼやけている理由は
その先に、都合のいい何かを求めているからなんだ。



花は咲かない。のに。

2010年10月18日(月)

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