Comes Tomorrow
ナウシカ



 アメリカの安楽死問題について

ニュースでもありましたが、今回の安楽死問題はヒドイと思いました。
日本では、Terri Shivanoさん程度の障害なら、まず安楽死させた方がいいという話にはならなかったと思います。
アメリカでは、ああいった問題はよくあるようです。

看護学校の授業で、こんなビデオを見たんですが、アメリカの確か8歳ぐらいだったか?の女の子がいて、その頃に事故による後遺症で植物状態となり、当時15歳まで成長していました。
彼女の場合は、自ら動くことはできなくても、介助してあげれば口から食事は取れて、言葉は話せなくても、何らかの反応はある状態だったんです。

でもその子の父親は、『こんなのは生きてるとは言わない、死んでるのと同じだ、なぜ生かしておくんだ、こんなになって生きてる価値なんかないじゃないか!』と安楽死を希望されてました。
ちょっと信じられない話でした。
そして、その父親は、その子を病院に残したまま、どこかに行ってしまいました。
つまり我が娘を捨ててしまったんです。
彼の中では、もう娘は死んでいるということなんでしょう。

そこで彼女はどうなったか?
ある支援団体が現れ、彼女の面倒を見てましたね。
でも、何とも可哀想な話でした。

植物状態で意識がなさそうな人でも、実は意識があるかもしれないんですよね。
ただ、外に言葉なり、何らかのサインを送れないだけで、本人は何か感じたり考えたりしてるかもしれません。
それを、私たちが受け取れないだけなのかもしれません。
もし、そういった意識さえなくても、生命があるだけでも、尊ばれる生命だと思います。
脳死の場合は、また別問題ですが…

私も看護師の仕事をしていて、多くの植物状態の人を見てきましたが、全然死んでいるのと同じようには見えませんでしたよ。
障害の程度は様々でしたが、何年も眠った状態の人が突然目覚めて、笑ったり、食事を口から取ったり、話したりまで回復した人がいました。
もう職場の皆は、『奇跡だぁ〜』と言って大騒ぎでしたね。
その裏には、ご主人の愛情あふれる看護の賜物があったんですが。

いつも眠っている奥さんに話しかけ、音楽を聞かせたり、足や手をさすってみたり、意識を取り戻したときに、また歩けるようになるようにと、関節が固まらないように動かしたり、それはそれは、看護師の私たちが頭が下がるような看護をされていました。
その甲斐あって、ずっと眠っていた奥さんは目覚めたんです。
ご主人の愛の力だって、皆言ってましたね〜

ご主人に、『本当に今まで、よく頑張られましたね、良かったですね、今までの苦労が報われますね』と言うと、ご主人は、『信じてましたから、いつか必ず目を覚ますって信じてましたから、そう思って、目覚めた時に、この人が困らないように、いろいろやってたんですよ』と言われました。
この言葉を聞いて、本当にスゴイな〜と感動しました!

また他の例では、15歳の男の子が、自分の起こしたバイク事故で、植物状態になってました。
毎日付き添っていたお母さんは言ってました。
『この子が事故する前は、暴走族の仲間には入るし、家にはろくに帰ってこないし、本当に心配で心配で堪りませんでした。
それが今は、こうして私のそばにいる。
健康で歩けていた頃よりも、今の方がいい子なんです。
いらぬ心配もしなくて済むし、こうやって生きていてくれるだけで、安心です』と。
本当に何とも言えない幸福そうな顔をして、話をされるんですよ、可愛い息子に頬ずりしながら。

またその息子さんも、お母さんがいる時と、いない時では、表情がガラッと変わります。
毎日見てたらわかるんですが、無表情の中にも、微妙な表情の変化があるんですよ。
確かに、彼には感情があったし、それを表情に表してた!
お母さんのいない時は、本当に不安げな表情をしてました。

それぞれに辛い時期を乗り越えて、家族の深い愛情で、例え植物状態でも、価値ある人生を送っている。
また身の切られるような不幸な出来事を乗り越えた後に見せた、ご家族の清々しい幸福そうな様子を見て、私は何だか温かい気持ちになりました。
何が幸福かなんて、わからないものだな〜と思いました。


2005年04月06日(水)
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