和ちゃん・・・・・全く知らない名前だ。 でも 苗字にはかすかに記憶があった。 これ 会社関係かも?
その女性は 主人が時々 出張する場所に住んでいる。
ああ 時間がない・・・・ もう仕事に行かなきゃ。 旦那も もうすぐ 散歩から戻ってくるだろう。
わたしは 後ろ髪ひかれながら 家を出た。
その日 私は 仕事をしたのだろうか? 確かに 仕事しただろうに なにひとつ覚えていない。
買い物して家に着いて・・・・ 私ってば なに考えながら 買い物したんだろう・・・・ 買い物袋には 今日の夕飯のマーボー豆腐とサラダの材料が 入っている。
全然 覚えてないや。笑うしかなかった。
「そうだよね こんなときでも 私は 主婦しなくちゃいけないんだよね」
玄関の扉が重かった。
昨日まで何も知らなかった向こう側の世界に戻りたかった。
いや もう戻れないんだから これから先のことを考えなくては、 自分を奮い立たせた。
きっと 真っ白な頭で ずっと考えていたのかもしれない。
証拠集めとか そんなことして悶々するよりも 話してみよう! いまここで 話さないと ずっと こそこそ隠れて 携帯チェックする嫌な女になりさがるぞ!
「パパ お茶しにいかん? ちょっと話ある」
平静を装い 声を絞り出した。
どんなふうに話そうか・・・まったく決めていなかった。
今 私は 映画のような虚構の世界に身を置いているような ふわふわした感触しかない。
わたしは ただ 現実の世界に戻りたかった。
例え 現実が どれだけの痛みを伴うとしても 逃げたくはなかった。
自分のことは まったく 棚に上げて・・・・・
それでも 真実が知りたかった。
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