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| 2004年08月14日(土) |
My『ミス・サイゴン』初日(マチソワ) |
わたし的サイゴン初日。 あまり好きな話じゃないし、続けて観たくないという意識は あったのですが、開演時間的に土日しか観られないので やむを得ずマチソワから。でも、マチソワでキャストによって とても違うこともあって、結構面白かったです。思ったより 短いから、ソワレ最後まで体力・気力が保てるし(笑)
<マチネ>別所、知念、石井、坂元、ANZA、tekkan、平澤 アンサンブル:め組 <座席>C-42番
ものすごくビックリしました。 この演目は以前BWで一度だけ観たことがあるのですが、 その時に隣の白人さんの態度にむっちゃ腹立ったのに、 今回、なぜか私はアメリカ人たちの感情しか理解できない。 エレンの♪今 彼女に会った では、思わずボロボロ泣いたし、 最後も、自殺したキムを抱き締めるクリスなんぞ目に入らず、 タムの前にしゃがみ込み、その頭にそっと手を伸ばすエレンに うるうるし、目を伏せるジョンの誠意を感じたりしてました。 いくら前方端からの観劇で、下手側には目が届きにくいと 言っても、どうなのよそれは?と自己に突っ込み入れながら。
日本で、日本人ばかりで上演していると、 強者の理論の方に感情移入してしまうんだろうかと、 ちょっと嫌な気分になりながら幕間に友人と話していたら、 それは、この1幕に関しては分かる気がすると言われました。 ベトナム側である別所エンジニアや知念キムに共感できない。 それは、私個人の問題もあるかもしれないけれど、それよりも 「切実さ」がないから。強い憧れや愛情が見えてこないから。 別所エンジニアになんて、余裕まで感じてしまう。
2幕になってもその印象は変わらないまま終演。 結局 記憶に残ったのはエレンと、ものすごくアメリカンなジョン。 ♪BUI DOIのイメージばかり強くていい人だと思っていた彼、 実はただ本当に「アメリカ人」なんだなと、とても納得。 常々、坂元健児のことを「脳みそ筋肉な人の表現は最高」と 評価している私ですが、ジョンって、とてもシンプルにそうかも。 その時その時、自分が正義と信じることをとても前向きに行う。 友人のために女を買うことも、友人の「気の迷い」を無視して 強引にアメリカに連れ帰ることも、自分らの「過去の過ち」である BUI DOIのため、力を尽くして働くことも、すべて正義。 なんて いい奴、なんて素敵なアメリカン。惚れちゃうくらい。
知念キムも、切実さがない以外は魅力的でした。 とても細く華奢で、石井クリスと並ぶと人種差を感じさせるし、 結婚式〜トゥイの乱入辺りでは、素朴な優しさを見せる。 戦争さえなければ、両親のもとで育ち、トゥイに守られて 子を育て、幸せに生きたんだろうなと想像できるキム。 ただ、ベトナム社会と密着した雰囲気が強すぎるせいか、 最後の行動が、やっぱりどうも理解しにくい。 「自分になかったものを息子にあげる」と言う言葉が、 「望む人生を選ぶこと」じゃなく「幸せな家族」みたいに 感じられてしまったのが、少し、なんだかなぁでした。
<ソワレ>市村、松、井上、坂元、石川、泉見、高島 アンサンブル:つ組 <座席>2階C-34番
ちょっとホッとした。このエンジニアなら、理解できる。 一夜で大金持ち、シャンパンに金髪美人にキャデラック。 笑っちゃうほど子供じみたイメージの「アメリカ」への憧れ。 でもその夢みたいなものを、あまりに切実に求めているから、 本当に笑っちゃいながら、同時に切なすぎて泣けてくる。 いつか本当の自分の力を生かせる場所へ行くまでの、 今は嘘と我慢と仮面と努力。夢がなきゃこんな場所で 生きていけるわけがない。こんな仕事していられない。
松キムも、やはり伊達に「松たか」じゃないなと思った。 基本のラインはきっちり押さえて、とにかくクリスを求める。 イっちゃってるんじゃないかと思うほど、その思いは強い。 歌も、友人から聞いたとおり少し聞きやすく丸みを帯びたし、 ラブストーリーとしての分かりやすさは文句のつけようがない。 金を取って見せるプロとしての上手さは、No1だと思う。
ただ、彼女の場合はキムが女王様かも。 「新入りだ」と連れてこられた瞬間から、最も輝いている。 不慣れな感じで見よう見まねでとる踊りのポーズが、 誰よりも決まっていて、かっこいい。目を集めてしまう。 衣装の問題も大きいけれど、「女」体型である太ももなどが 「初めてなの」という言葉を裏切って、強さを見せる。 しかも、目的以外に対して排他的でエキセントリックな 愛し方なので、どうかすると、周りが見えないキムが 周囲の人に被害を与えまくった話という感じに取れてしまう。 前回彼女を観たのが『おはつ』だったせいか、どうしても 印象が重なってしまい、最初のうちは苦労したくらい。
トゥイなんか、彼女の最悪の被害者だったかも。 彼が乱入して来た時のキムは、「親が死んで村が焼け、 私が一番必要とした時にいなかった貴方など要らない」と、 従兄弟に対する情愛も何もなく全面的に強く否定するし。 「私は望むことを全て叶える。そのために不必要なものは 排除、必要なことは全て行う」という印象ばかりが強いから、 タムを刺そうとしたトゥイを撃った後も、死体を抱き締めた 姿にものすごく違和感。松キムなら、死体を一顧もせず、 打ち捨てて去っていきそうな印象があったもので(苦笑) 黒髪をピッチリ分けて、いかにもベトナム現地の人間です、 という雰囲気が出ていた泉見トゥイだけに、とても哀れ。 関係ないけど幽霊トゥイ、仏壇を降りる足元が危なっかしい。 一瞬よろめかれた時は、思わず笑いそうになっちゃったよ。
松キム、井上クリスとの相性は、年齢的にはともかく、 役の作りとしては合っていたんじゃないかなと感じました。 自分を救ってくれる男に対して極度に狭い視界で一途な 松キムに対して、一孝クリスじゃ誠実すぎて辛そうだし。 対して、「やっぱり君もアメリカ人だったんだねぇ」という 印象が強い井上クリスだと、それなりにキムも哀れに見える。 井上クリス、ホテルの部屋に帰ってきた時のエレンとの歌なんて、 3年で立派なアメリカンとして更生したんだねぇ・・って感じだし。 アメリカ人なら彼女を救えるはずだ!僕が迷っていた時期に 間違って起こしてしまった過ちを認めて償うんだ!ってか。
あーもういいかげんにしろよ、これだからアメリカの正義って そこいらじゅうに被害を撒き散らすのよねって感じですか? 「過ち」「過去」で済まされる側は たまったもんじゃないよ。 思わず、クリスのことを「ご立派だよ」「馬鹿げた事を」と 責めるジョンに対しても、あなたが同じ立場だったらどうした? と尋いてみたくなってしまいました。あなたも同類よ? これって本当に、若さ青さが感じられる人が演じてなきゃ ちょっと耐えられない話なんだろうなぁと、しみじみ思ったり。
ソワレは、誰も絶対的に悪いわけじゃなく、でも、 全員が少しずつ悪いところはあって、かつ全員が被害者、 というストーリーが見えたので、いろいろあっても満足でした。 相当 満足したんで、キムだけ入れ替えて観てみたいな。 多分、松キムは既に完成形に近いので(その点でもプロ)、 現時点で不満な点も良くなる可能性のある、他キムで観たい。 あ、ついでに石川エレンは貼り付いた表情と揺れる歌声が 苦手だったのでパス1できると嬉しいな〜なんて、 たった2回観ただけなのに、もう我がまま思い始めてます。
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