水死体

遠い 遠い夢のような現実よりも
すぐ傍の避ける事の出来ない現状の方が良いと
いつか思ってしまうんじゃないかって ずっと怖かったんだ
そうしてると ふと 思い出すのは水死体だ
波打ち際に打ち上げられた どこか遠い使者のように
ふと顔を上げ 一言 言うのはその言葉では?

「お前は間違っている」

だんだん現状の素晴らしさが胸に迫るんだ
その分だけ しかしまた つまらぬ世界が浮かび上がるのだ
すると大人になったと思うんだ
大人って言う死体にまた
近づいてるんだって泣くんだ

僕は人間だ
人間は悲しい生き物だろう
下らぬ事に腹を立て 喜び 泣き
最後には神に祈るんだ

こんなところでのさばってないで
君の思う通りに生きなさいって誰かが言うけど
思い通りに生きられるならきっとみんなそうしてる
自分を犠牲にして 人の為に生きている人もいるけど
変な同情を起さぬように
自分は本当は何で生きてるか迷ってるんだ
そうして遠い夢のような現実を捨てていくんだ

だけどいくら遠くても儚くても
それは現実
やろうと思えば出来る事

ああ だけど何故だろう

僕には今日もまた水死体が囁く

「お前は間違っている」



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