夜ウォーキング中、自転車に乗った小学生の男の子二人とすれ違った。
時刻は9時をまわっている。
私が小学生の頃は暗闇が恐くて外出なんて考えられなかったもんだ。
今は夜でも明るいもんね。コンビニとかいろいろあって。
ふと思い出した。
小学校3、4年の頃、隣の席だったN山君が
授業中いきなり「僕、本当は宇宙人なんだ」と言い出したのだ。
たぶん先生はいたけど自習中だったと思う。
ななな何?と私はびっくりしたというより動揺してしまった。
だってN山君は頭が良くてスポーツもできたけど、派手なタイプではなく
高倉健の小型版(?)のような男の子だったのだ。
普段からわーわー冗談を言うような男の子ではなかった。
「だってお父さんとお母さんがいるでしょう?」と私はたずねた。
するとN山君は、あれ地球上の仮のお父さんとお母さんなんだと答えた。
うちの裏手にN山君の家があったので時々N山君のお父さんを見かけていた。
今思うと大学の先生とか研究者のような雰囲気で、
こども心にちょっと普通っぽくないなあと思っていたのは確か。
余計N山君の話にどきどきした。
N山君は、実際自分が住んでいるという星の地図を書いて見せてくれた。
なんかものすごく複雑な地図に見えた。
そしてN山くんは
「確かめたいなら今日夜8時に僕の家の前まで来てみなよ、わかるから」
と言ったのだ。
私は行こうかどうかかなり迷った。
結局、夜8時という時刻に行くのを諦めてしまった。
クラスの女子の友だちひとりに話をしてみたが
行ってみようという話にはならなかった。
小学生の私にとって暗闇に出かけていくのはすごく怖いことだったのだ。
不思議とその後、N山君とこの話をした記憶がない。
小学校卒業以後、私の家は引越してしまった。
もし万が一N山君と再会することがあったら
N山君は「え?そんなこと話したっけ?冗談だよ」と言うだろう。
だけど心の隅で、実はN山君は存在しない人で
タイムトラベラーの中の出来事だったのかも・・・
なんて思っている自分がいるのだ。
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