Diary 有加利 【
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- 2009年09月27日(日) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その5
外からは少年の声、化け物の咆哮(声?)が聞こえてくる。
私は急いで敷いた布団の上に姉を何とか横たわらせると、布団をかけた。
「姉さま、後でまた来ます」
「ルキ・・・ア、さん・・・?」
寝室を出ようとしたところで、か細い声に呼び止められた。
「姉さま!!」
意識の戻った姉が青い顔はそのままに、薄目を開けてこちらを見つめていた。
「私は、大丈夫・・・だから」
起き上がろうとするのを止めようとすると、姉はそれを制止してまっすぐに私を見た。
「いざとなったときは、お守りを・・・お守りを頼りなさい」
「お守り?」
「私にはできないけど・・・あなたにはできるかもしれないから」
「何を・・・」
尋ねようとした時、一際大きな音を立てて家が揺れた。
化け物がぶつかったのか少年がぶつかったのか分からないが、
ともかく外では激しい戦いが行われているらしい。
「私はいいから、行きなさい」
「でも!」
「大丈夫、自分の身は自分で護ります。だから早く」
- 2009年09月22日(火) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その4
異形なもの。
それは今までに見たことも無い姿だった。
直感で決して人間とは相容れない、対極にあるような存在だと思った。
ようするに、この世のものではない。
(化け物・・・!)
図体は人間よりはるかに大きい。それこそ比較するのが莫迦らしくなるほど。
私くらいの身長ならば手のひらでゆうに隠れてしまうのではないだろうか。
そして髑髏を模した様な顔は、ぞっとするような威圧感をこちらに放っている。
そんな化け物が、開け放たれた玄関の向こう側からこちらを覗きこんでいた。
「姉さま!!!」
私は奴の放つ呪縛を解いて階段を駆け下りると、青い顔でぐったりと倒れこんでいる姉の側に寄った。
先ほどの衝撃で化け物に何かされたのか、意識は無い。
「姉さま!!!」
「落ち着け。気を失っているだけだ」
また音もなく私の側に少年が現れた。
だがその視線は化け物だけを見つめている。
「姉さまには持病が!!」
「その影響はねーよ。信じられねぇなら後で診てやる。
あいつは俺がなんとかするから、お前は姉貴を休ませとけ」
「貴様に何が・・・」
言いかけたところで少年は私の隣から忽然と姿を消した。
いつの間にか化け物の眼前で、この家とは並行になるように対峙している。
「何でこんなことに・・・!」
私は姉の体に負担をかけないようゆっくりと動かして、寝室へと向かった。
- 2009年09月13日(日) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その3
衝撃に一瞬少年は体のバランスを崩した。
左頬を押さえ、何が起こったのか理解できない様子でこちらをまじまじと見つめる。
やっと向こうがこちらの存在を意識したことに満足して、私は逃がすまいと少年の胸倉を掴んだ。
「人が集中して問題を解いている最中に真後ろから声をかけるやつがあるか!!大体なんだ、貴様は?今時はそういう恰好が流行りなのか??え?この変態コスプレ幽霊!!」
「だ、誰が変態の霊だ!!つーか、霊じゃねーし!・・・ん?というか、お前・・・!」
「きゃああああ!!」
少年の言葉はすぐ近くで上げられた甲高い声に遮られて最後まで聞こえなかった。
「!?」
はっとして少年を突き放すと、部屋のドアを開けて階下を見る。
背後から少年が不満げな声を上げていたがそんなことなど気にしている場合ではなかった。
「姉さま!!!」
姉がこちらに背を向けて座りこんでいる。へたりこんでいる、と言った方が正しい。
その華奢な肩は遠目にも震えていて、私の部屋に持っていこうとしていたであろう湯飲みが無残に割れて近くに小さな水たまりを作っていた。
「姉さま!何が・・・」
「逃げて!!ルキア!!!」
悲鳴のような姉の言葉と同時に家が揺れ、砂埃が舞う。
その影から現れたのは異形なものだった。
- 2009年09月09日(水) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その2
今私達が住んでいるこの朽木家は、特に広いというわけではない。
間取りも一般の家庭と変わらないので、外部の人が見れば社長の家にしてはぱっとしない、という印象を受けると思う。
ちなみに本家である朽木家も義兄の会社から遠くないところにあるのだが、
どうも住みにくいらしく、結婚と同時にこの家に引っ越してきた、というのが事実だった。
越してきて5年。今では三人とも家といえば本家ではなくこちらを連想するほど気に入っている。
そんな広くも狭くもない階段を登って部屋に入ると、鞄を取って中を開ける。
「数学、英語、古典、化学に物理、あと日本史のレポートか・・・」
列挙してみるとその量にうんざりしてくるが、とりあえず早くできるものから片付けるのが鉄則だ。
古典から・・・と思われがちだが、実は一番数学が得意なので、数学の教科書とノートを開く。
二次方程式は今日の授業でしっかりと理解できたはずだから、解くのも簡単だ。
「へー、今時の学生っつーのは随分変な印のついた問題を解いたりするものなんだな」
「きゃあっ!?」
突如聞こえた声に体が震えた。
真剣に物事に取り組んでいる時に肩を叩かれたりした時と同じ反応だ。
心臓がバクバクするのを抑えながら振り返ると、そこにはいつの間に入ってきたのか一人の男が立っていた。
表情からして同年代の少年のような気がしたが、それよりも気になったのはそいつの恰好。
鮮やかなオレンジの髪に黒い着物、そして腰にはスラリと長い日本刀が見える。
「なんだ貴様は!?」
落ち着いてやっと声を出せた時には、その可笑しな恰好をした少年(とあえて呼ぶ)はこちらに目もくれず、
何かの気配を探るかのようにじっとしていた。
「貴様、聞いてるのか!?」
少年は私の問いを無視しあさっての方向に視線を向けると、ぶつぶつ何かを呟いていた。
あからさまに怪しい。
私はそいつの正面に回りこんで、顔を覗きこんだ。
それでも変わらず何かを考え込む少年の頬に触れ。
そのまま距離をとると力任せに右手を叩きつけた。
「いい加減に人の話を聞け!!」
- 2009年09月06日(日) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その1
私の名は朽木ルキア。年は15。いたって普通の高校生だ。
「ただいま」
「おかえり、ルキアさん。白哉様は今日も会議で遅くなるそうだから、夕飯は先に食べてしまいましょう」
待っていたかのように台所から玄関に現れた姉の緋真は、靴を脱ぐ私を見ながらそう言った。
私は姉夫婦の家に居候している。
義兄である白哉は、このたび朽木ホールディングスの代表取締役に就任した。
その若さで業界トップの企業の社長になるのは異例のことで、各界から注目をされているらしい。
連日社内会議や取引先への挨拶、打ち合わせ等で多忙な日々を送っている。
「ごちそうさま」
「もう部屋に戻るの?」
いつもは食後のお茶を一杯飲んで姉とたわいのない会話をしてから部屋に戻るのだが、
今日はいつもより宿題が多く出たので早めに部屋に戻ることに決めた。
品行方正、成績優秀で通っている朽木ルキアが、宿題を忘れるなんてもってのほかだ。
その旨伝えると、姉はにっこりと微笑んだ。
「そうなの、ご苦労様。後で部屋にお茶を持って行きますわね」
一旦階段へ向かいかけたところを引き返して私は言った。
「姉様、いつも言っているでしょう」
「え?」
「いつまでも過保護すぎます」
姉は私の言葉にはっとすると苦笑した。
背中に『わかりました』という言葉だけを受けて、私は階段を登っていった。
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書いてみました。
原作1話をアレンジしただけですけど。
全10話を予定しています。
お付き合いくださると嬉しいです。