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■ 『 わたしを離さないで 』
カズオ・イシグロの最新長編 『わたしを離さないで』(早川書房)読了しました。
長崎生まれの著者は、5歳のとき父親の仕事でイギリスに渡り、以降ふたつの国の文化を背景に育ったそうです。 英文学作家なので、作品が日本語に”翻訳”されているのが、ちょっと面白いかも。
裏表紙や帯に書かれた内容以上のことは、ここでは書けません。謎解きの要素が、ある程度の比重を占めていますので。
ただ、物語の大前提とも言うべき謎が意外と早い段階から明かされていくことに、いささか肩透かしをくらうかもしれません。それはこの作品が”ミステリー”ではなく”ミステリアス”だからと申せましょう。
あるいは、読者にとってのサプライズは文中の登場人物たちには既知の事実であり、それよりも彼らにとってもっと重要な意味をもつ謎解きこそが目的――とも言えそうです。
こんなことあるはずがない……いや、充分あり得る……もはや、あたしたちが知らないだけかも――現実の時空列を背景にしていれば、ましてや問題の一端をあたしたちも知っているとなれば、そんな妄想に取り憑かれてしまうのも止むを得ない気がしてきます。
文中に出てくるスタンダードナンバーの別ヴァージョンを偶然持っていたので、それを聴きながら後半を読みました。 「人は、そうと知りつつ、人をこれほどまで残酷に扱えるのだ」と、心に刻みながら。
Never let me go Love me much too much If you let me go Life would lose its touch What would I be without you There's no place for me without you
Never let me go I'd be so lost if you went away There's be a thousand hours in the day Without you I know
Because of one caress My world was overturned At the very start All my bridges burned By my flaming heart You'd never leave me, would you You couldn't hurt me, could you Never let me go Never let me go
NEVER LET ME GO (Livingston-Evans/1956) 「わたしを離さないで」
2006年09月03日(日)
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