-殻-
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ああ、またか。
君とはずいぶん長い付き合いになるけど、ずっとすれ違ってばかりだね。 僕はあの頃君が好きで、好きで好きで、君が引っ越すって聞いて胸がつぶれそうになって、思い切って電話をしてみたり、家の近くまで行ってみたり、もうバレバレにバカなことしてたもんだなあ。でも気持ちを伝えることはできなくて、それでも大学に入ってからまた同じ街に住んでまたちょくちょく会うようになって、お互いの恋の話や生活のことや、いろいろと話すようになって。僕の気持ちが勝手に盛り上がって君に突き放されたり、君が近づいてきたときには僕には彼女がいたり、ケンカしたり傷つけたり傷つけられたり、ぐるぐると同じところを回ってたね。 そしてまた今日、君の誕生日に、僕は君と一緒にいて、お気に入りのお店でお気に入りのビールを飲んで、ちょっとしたプレゼントを贈っていい気分になってたのに。君に会いたくて会いたくて、やっと時間の都合をつけたのに。もし状況が許せば、今日こそは僕の気持ちを伝えようと思ってたのに。 そりゃないよ。 ああ。 タイミングが悪いのはまあ、いつものことというか慣れっこなんだけどね。それにしたって今日は、なんだかね。 でも、実はそれでいいのかもしれないね。 僕らはこれからもずっとずっと、こうやってすれ違いながら、たまーに二人で会ってはお互いのことを話して、好きになったり嫌いになったりしながら続いていくのかも知れないね。 すれ違ってるからこそ、続いていけるのかも知れないよね。 きっと、そうだよね。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |