-殻-
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僕らは名前を付ける。
僕らの共有するもの全てに、名前を付ける。 それは果たして、僕と君の間で同じものを意味するのか、 僕らには実は知る術がない。 それでも僕らは、名前を付け続け、その名を呼び続ける。 いまこのむねのなかにあるもの、 こいつがもし全くこの姿のままで君の心に届いたとしたら、 君は何と名付けるだろう。 僕はそれが知りたい。 しかしそれはできない。 不可能なのだ。 そう、つまり、 僕らが何と名付けようと、「それ」は共有されない。 同じ名前で語られることだけが、僕の「これ」と君の「それ」を繋ぐ。 君は、そんなものは持っていないと言うけれど、 君が名前をつければ「それ」は「それ」になる。 定義は君が持っている。 君が決めていい。 君が決めていいんだ。 だから、名前を付けよう。 僕と君を結ぶ、そのたった一つの言葉で、 共有する僕らを演じよう。 それが、正しい姿なのだから。 それが、きっとあるべき姿なのだから。 名前を付けよう。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |