-殻-
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隔てなく分け入る束の間の、
その紅は白布に滴り落ちる。 恍惚に浮かされる口唇が紅を求め、 指で掬って錆の匂うを貪る。 貫くものは刃の如く、 貫かれるものは傷口の如く。 身を捩る度、紅は溢れる。 注ぎ込む白は、紅に押し流されて、 吐き出されたように滞っている。
その先を望んではいけない。
渇いたままで留まることを、幸せと呼ぶべきだ。 その不器用な、ふくよかな心を壊してはいけない。 そんな権利は僕にはないのだ。 なのに胸の中で、僕は何かを待っている。 卑怯な時間だけが、緩やかに過ぎていく。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |