殻

この「殻」を書き始めてから、もうすぐ10年目になる、らしい。

ある時期を境に、なかなか一人でじっくりと言葉を探す時間が取れなくなって、
自分でもびっくりするくらいに間隔が開いている。

そんなことをしているうちに、世間ではブログが流行り、
乗り切れないうちにツイッターなるものが登場し、
この「日記」というメディアはずいぶん人口が減ったみたいだ。

ふと思い立って、自分の日記IDの前後がどのくらい開いているのか見てみると、
前が76番、後ろが34番だった。

つまりこの間、111人の中で、僕だけがまだエンピツにいるわけだ。
書き始めた頃は、びっしりと埋まっていたはずなんだけどな。

僕が登録してちょくちょく読んでいる日記も、頻繁に更新されているのはごく一部だ。
ほとんどの人が、別のメディアに移行してしまったのか、
あるいは書くこと自体をやめてしまったのか、それは定かじゃない。

ただ、メディアが変わったって、自分の言葉まで変わるわけがない。
変にインタラクティブになって、弊害も増える。

バーチャルなネットワークを手に入れたって、世界はフラット化なんてしない。
ネットを巡る情報のほとんどは、表現とすら呼べない独り言や、匿名の中傷。
それがふとしたきっかけで暴走して、くだらないブームを作る。
そして匿名の出歯亀が大挙して対象を食い潰す。

なんだか、そういう繰り返しにずいぶん疲れてしまった。
結局僕は、紙でできた昔ながらの本を、手でめくりながら言葉をなぞる。