コーヒーを飲み干す。
とまどった顔が 停止していた。
「でね、、、、、読んじゃったのよ」・・・・「え?」
「女の人からの・・・・メール」・・・・「そんなのないだろ」
あわてて 否定する顔は 強張っている。
「もういいよ 嘘はいいよ わかってるから ちゃんと話そう」
観念したかのように 黙ってしまった。
「あのね ●●さんのこと そっちの人のことは もういい。 でも・・・・・・もう一人の人・・・・・私の知らない人 和ちゃん って誰?」・・・・・かなり驚いてる「・・・・」
「旦那さんいてるの?」・・・・「いるけど別居状態」絞り出すように言う
「わたし お互いが本気になってしまったり トラブルになったりするのが嫌なの」・・・・「それはない 絶対ない」
「パパは 優しくて 家庭を大事にしてくれてるから わたしは これから先も 家族としては ちゃんと繋がっていたい」・・・「うん」
「でも もう わたしたちって 夫婦としては終わってるやん?」・・沈黙
「わたしじゃ 無理なんでしょ?」・・沈黙
「パパが 仕事でのストレスを その人で癒されるっていうのなら わたしは いいよ。働いてる間はしょうがないかもしれない」・・沈黙
「私で癒されないなら しょうがない」・・沈黙
「ただ 家庭は 家族は大切にしていこう。 でも夫婦としては終わり? パパはパパ わたしはわたし で いいね。 そうしていこう・・・・」
それは どういう意味?わけがわからないという風に見直された。
・・・・「どいうこと?」
「パパはパパで好きにしてもいいよ 私も見つけるから」 「だって わたしじゃダメなんでしょ?」
わたしは どうかしていた。
自分の保身に走っただけだ。
本音は 本当は やりなおしたかったのに。
「お前じゃ癒されない 無理だ 抱けないしストレスが溜まるだけだ」 そんな言葉を訊きたくなかった。怖かった。 そんなこと言うような人じゃないってわかってるのに。
気持ちとは裏腹な言葉が また この人を傷つけていく。
旦那と二人 夫婦としての絆を取り戻したかったのに。
でも口からでる言葉は スルスルと 煙草の煙のように 舞い上がっては 消えていった。
淡々と時間は過ぎて行った
「なにか 私に言うことある?」
そう尋ねると
「悪かったと思ってるよ」 「家のことも 仕事も よくしてくれてると 思ってる」
「いらっしゃいませ おタバコ吸われますか?」
「吸います」
「はい じゃあ こちらへ どうぞ」
私たちは 角のコーナーに座った。 久しぶりに二人きりで。
でも 私の目の前の 見慣れた人は どこか遠い人にしか 見えなかった。
《そっか〜 そうだよね〜 結婚してても 所詮 他人だもんね》
醒めてた。不思議なくらい落ち着いていた。 さっきまでの ばくばく感もどきどき感も まったくなかった。
なにを言おうか なんて考えなくても すらすらと 台詞のように 言葉が出てくる。
まるで 女優になったかのように。
「パパ パパにいくつか 謝らなきゃいけないことある」
「まずは パパの携帯、勝手に見ちゃいました。ごめんなさい。」
「それから 今までのこと・・・・随分 パパのこと
ないがしろにしてたなぁって。言いたいことバンバン言って 傷つけただろうなぁって。。。。ごめんなさい。」
煙草をくゆらせながら ちょっと驚いた顔を見せる。
その顔を見て 私は思った。
随分 変わったなぁ〜 昔の面影は全然ないなぁ〜 でも この人は 昔から優しくて穏やかな人だった いい人だった
「パパ パパは本当は いつも優しくて 穏やかで すごくいい人。なのに わたしが こんな性格で わがままだから それが 原因で 喧嘩になってたと思う。ごめんね」
なんでかわからないが 私は 謝っていた。 素直に。それは 偽らない心からの言葉だった。
和ちゃん・・・・・全く知らない名前だ。 でも 苗字にはかすかに記憶があった。 これ 会社関係かも?
その女性は 主人が時々 出張する場所に住んでいる。
ああ 時間がない・・・・ もう仕事に行かなきゃ。 旦那も もうすぐ 散歩から戻ってくるだろう。
わたしは 後ろ髪ひかれながら 家を出た。
その日 私は 仕事をしたのだろうか? 確かに 仕事しただろうに なにひとつ覚えていない。
買い物して家に着いて・・・・ 私ってば なに考えながら 買い物したんだろう・・・・ 買い物袋には 今日の夕飯のマーボー豆腐とサラダの材料が 入っている。
全然 覚えてないや。笑うしかなかった。
「そうだよね こんなときでも 私は 主婦しなくちゃいけないんだよね」
玄関の扉が重かった。
昨日まで何も知らなかった向こう側の世界に戻りたかった。
いや もう戻れないんだから これから先のことを考えなくては、 自分を奮い立たせた。
きっと 真っ白な頭で ずっと考えていたのかもしれない。
証拠集めとか そんなことして悶々するよりも 話してみよう! いまここで 話さないと ずっと こそこそ隠れて 携帯チェックする嫌な女になりさがるぞ!
「パパ お茶しにいかん? ちょっと話ある」
平静を装い 声を絞り出した。
どんなふうに話そうか・・・まったく決めていなかった。
今 私は 映画のような虚構の世界に身を置いているような ふわふわした感触しかない。
わたしは ただ 現実の世界に戻りたかった。
例え 現実が どれだけの痛みを伴うとしても 逃げたくはなかった。
自分のことは まったく 棚に上げて・・・・・
それでも 真実が知りたかった。
いつものように ぽいっと投げ捨てられたように ダイニングテーブルの上に置かれた携帯電話。 主人は 無防備だ。
私といえば 彼とのやり取りの大半を携帯メールでやっているので 取り扱いには とても慎重なのに。
これまで 主人の携帯を覗いてみよう なんて気持ちは 一度も起こらなかった。 それは あまりにもの無防備さが 案外 強靭なデフェンスに なっていたのかもしれない。
まったく・・・・・・ ただの抜け作なのか・・・・ あるいは 無意識の策略家なのか・・・・
それは 簡単に見ることが出来た。
何故 そんなことしようと思ったのか 今でも 不思議だ。 「たぶん 仕事関係だけだろうな つまんない男」 見下した気持ちがあった。
特に ここ何年かは主人に対して かなり冷たい態度を とってきた。 お互い 醒めきっていた。
受信フォルダが二つ。 一つは仕事関係。 もうひとつは なにも入っていない。
何故か胸騒ぎがする。
送信トレイを見た。 全部で 42件。
去年の夏くらいからのメールが そこにあった。
「ふ〜ん 昔の知り合いのおばさんとの季節の挨拶か・・・ 固い文章だなぁ」
「あれ? 絵文字?うそー。」 私への業務メールっぽい中に そのメールはあった。
ん? 違和感を感じる。 そして そのメールはあった。
「今日 午後から寄ります」
なんで? なんでこの人のところに 午後から行くのよ?!
「お昼まで ごちそうになって ありがとう」
ばっかじゃないの!?
「今日は役にたたなくて ごめん」
え? なに? これって・・・・もしかして?
わたしは ザワザワする気持ちを抑え 何度も読み返した。
他のメールも読む。
すると その彼女とはまた別の女性へのメールがあった。
「和ちゃん・・・・・・・」
目の前が真っ暗になった。
馴れ馴れしく呼びかける優しいメール。
「今 ホテルに着きました。待ってます。」
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