仕事中。 社長夫人は外出のため、一人で店番。 そんな時に限って一風変わったお客様がいらっしゃったりする。
私より少々年上っぽくて、何だかとにかく風変わりな男性。 何でこの人サングラスを後ろにかけてんだろ。
暫し店内を見回した後、そのお客様は私に向かってこう言った。
『履き易くて使い捨てできる靴ありますか?』
意味が分からず頭の中にでっかい疑問符が3つほど浮かんだが、 とりあえずそのようなものはない旨を申し上げる。
『じゃぁ、この辺にそういう靴屋さんありますか?』
疑問符、ひとつ追加。 とりあえずそのような店は私の知る限り、この界隈にはなかった筈だ。 それを伝えてから私の疑問符はその後、増えてゆくことになる。 (以降『』の後は全て私がその方に申し上げたこと)
『ところで区役所はどこですか?』 …は? あの、区役所でしたら駅の向こう側です。 ここからだと歩いて10分ほどかかりますが。
『そのカラーコンタクト、何色ですか?』 え?グレーですけれど…。
『目に悪影響とかないんですか?』 検査は定期的に受けてますから…。
『それ、メンズでも大丈夫ですかねぇ?』 あの、私の男友達でも使ってるのがいますので。
『何色が流行りなんですか?』 あの、それはお店の方にお聞きになって下さい。私のは個人的な好みですので。
『どこで作ったんですか?』 …東口のビッグカメラですけど…。
ここまで質問攻め(しかも店の商品とは無関係だし)だと 変というかちょっと怖い。つい身構えそうになる。 結局そのお客様は何も買わずに『ありがとう』と去って行かれて、 私は思わず溜息が出た。
この話はここで終わりじゃない。
3時間後に再び来店された。 『今日は充血が酷くてダメでした。 やっぱり一晩寝てからじゃないと。』 そんな報告をしに、わざわざ。
実に律儀なお客様である。
高校時代の友人とお昼を食べるために、大宮まで。 確か去年同窓会があった時に来るには来たけれど、 周辺をぶらぶらする余裕はなかった気がする。
ちょっと早く家を出て、かつての庭をぶらついていた。
高校が大宮の外れにあったのと、当時通っていたライブハウス (現在はなくなってしまったけれど)が大宮にあったのとで その頃は本当に駅周辺が庭同然だった。 もう16年くらい前の話。
改めて見てみると『あれ?こんなに繁華街って狭かった?』という感じ。 駅前こそ大きいビルが建っているものの、そこを過ぎてしまえば まるで境界線でもあるかのごとく一気に視界が開ける。 暫くその境界線を眺めて、小洒落てしまった駅へ戻り もうここは知らない場所に等しいと思った。 寂しいけれど、でも仕方がない。
寂しいついでに。
駅前の地下にあったソウル・バーもなくなっていて、ちょっとがっくり。 ノリのいいマスターお手製の糠漬け、美味しかったのになぁ…。
午前3:45に目が覚めて、暫くゴロゴロしても寝つけそうになく 居間でヘッドホンから流れる音楽を聴きながら爪を染め、 相変わらずな仕上がりに溜息ついた午前5:00に相方起床。 雨戸を開けたら、無性に走りたい衝動に駆られる。
まともに食事もしていない体では 昼間のライドは無理かもしれないけれど 早朝ならば何とか走れるんじゃないか、そんな気がした。
慌てて冷蔵庫に常備してあるゼリー飲料を喉に流し込み ボトルにスポーツドリンクとクエン酸パウダーを混ぜて ジャージに着替えた後、愛車のご機嫌伺い。
午前6:00、相方の出勤時間に合わせて家を出る。 階下の義父母はまだ寝ていたので、靴音をさせぬよう、そーっと。 (ロードシューズは構造上、玄関などではやけに響く。)
サドルの上で考えたいことがあった。
でも、その『考えたいこと』が、いざ走り出すと何も浮かんでこない。 1ヶ月近く乗らなかったため、脚も思うように上がらないし 息ばかりがむやみに上がっているせいなのか。 それとも自分自身心のどこかで処理してしまったせいなのか。 途中にあるグラウンド横のベンチで風に吹かれていても、 感じるのは風の心地よさと異常なほど青く見える荒川だけ。
それならそれで、いいのかもしれない。 少しだけ、何かがふっ切れた。
帰宅してシャワーを浴びていたら、何かの拍子にやってしまったのだろう。 朝染めたばかりの左中指の爪に、小さいひっかき傷。
* * * * * * * * * *
ここまでは昼頃の話で、その後がまた一騒動。 掲示板にも業務連絡として書いたが、使っているノートの液晶が 突然真っ暗になってしまった。
確かに今朝から画面がひどく揺れるし、おかしいとは思っていた。 バックアップも前やったのがいつだったか思い出せないくらいだったので 一応やっておかなきゃなと思った矢先にこれである。
というわけで慌てて先日直したばかりのVAIOを ネットに繋げて、今これを書いている始末。
ああああああああー。
CDを流してボーっとしていた午前中、実家から電話。
実父は数年前から独立して自宅で仕事をしているのだが、 最近税金対策も兼ねて会計士さんに保険を勧められたらしい。 個人ではなく、法人のを。
会社名義ったって、社長が実父で専務が実母で 警備員代わりの犬が一匹いるだけ。 (確かにこいつが賢いのは認める。)
個人の保険であれば最近は『お医者様の診断不要!』などと 謳ってはいるけれど、法人じゃそうもいかないらしい。 診断書どころじゃない。
嘱託医直々のお出ましである。
自宅で尿検査から採血、血圧、心電図に至るまで全部。 普段寝っころがってテレビ見てたりするような場所で採血。 普段ゴハンを食べるテーブルの横で いきなり採尿カップを出されて一瞬ひるむ実母。 最初は意味が分からなかったそうだ。そりゃそうだ。
とはいえ、その辺を徹底的に調べられたのは代表者である実父。 『家じゃあまり飲ませないようにできるけど 外で飲んでくるとねー。自己管理の意識低いから。』 とこぼす実母に すみません母上様、私もだよと心の中で詫びながら相槌を打つ。
まだ保険会社からの回答はきていないらしいが、 実母は話すだけ話して会社の電話が鳴ってるからと一方的に切られた。
……ところで、何の用だったんだろう。
昼頃、電車で出かけようとしたらやけに子供が目立つ。 何のことやら分からずホームへ降りて、理由が分かった。 ポケモンのスタンプラリーのせいらしい。なるほど。
そういえば、夏休みなんだ。
高校の頃はライブハウスとスタジオに行ってた記憶しかないし、 中学の頃はブラスバンドの部活動に必死だった。
で、もう少し遡って小学生。
今は実家の周りはかなり賑やかになってしまったけれど、 その頃は田んぼと雑木林だけでいたって静か。 遊び場といえば通っていた小学校の校庭だったから、 ものすごく真っ黒に日焼けしていたと思う。
近所に住んでいた子供が男の子ばかりだったせいか、 あんまり女の子らしい遊びをした記憶がない。 明け方に雑木林へカブトムシを取りに行ったり 沼地でザリガニ釣りをしていたり。 そういえば子供の頃は釣ったザリガニをその場でひん剥いて 平気でちぎって餌にして釣ってたっけ。 …絶対今はできない真似だ。
それにしても40日もの長い休み、家じゃ何をしていたんだろう。 本が好きな子供だったから何か読んでいたと思うが 何を読んでいたのかさっぱり思い出せない。
不意に、その頃読んでいた本が読みたくなってきた。
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