夕方になってから、ジーンズにTシャツのまま ロードを引っ張り出した。 バッグの中には煙草とzippoと携帯灰皿とMDに財布。
別に何を考えるでもなしに、いつもの土手に向かっていた。 ただ風が気持ち良さそうだと思っただけで 走ろうという気は毛頭なく、手にはグローブすらはめていない。
土手下の駐車場が騒がしい。 パトカーが1台、赤色灯を回しながら停まっているのが見えて その後土手上で座っていた私の後ろを、覆面パトカーが2台 クラクションを鳴らして通り過ぎる。 川下の方で何かあったのだろうが、一瞥したきりまた 風に吹かれながら川面を眺めて過ごしていた。
時々、飛行機雲が空を切るように伸びていったり 川を走るボートが波を作っていく。 真ん中の辺りで魚が跳ねる。
そんな光景を見て、ふと自分の影が長くなっているのに気付いた。 左肩越しに後ろを振り返れば、雲間にオレンジ色の夕陽があり そこで初めて1時間余りその場に居たことを知る。
2つミスった。 ライトを持ってこなかったことと、デジカメを持ってこなかったこと。
聴かないCDを整理しようと、ふと思い立って ラックの中のものやら寝室に置いてあるものやら 入りきれなくてオーディオ上の箱に入ってるものやら とりあえず自分のCDだけを選って出してみる。
‥‥あれ、170タイトルって‥‥こんなにあったっけ?
滅多にCDの整理をしないツケ。 10タイトルずつ積んでいる途中から、段々嫌になってきた。
その中に3〜4組ほど同じCDがある。 何をボケたか持ってないものと勘違いして買ったらしい。 大した金額にはならないだろうが、 中古屋に持っていく箱に放り込む。
その時期の『勢い』で買ってしまったものもある。 ジャケットを見てもどういう音楽だったのか思い出せないので 再生してみたら、意味もなくこっ恥ずかしくなってしまった。 正直言って今更これを売るのも恥ずかしいが、 ただ捨てるよりマシだろうとこれも箱へ放り込む。 そんな感じのが10枚ちょっと。
一番多くて困るのが、微妙な位置にあるCD。
ごくたまに聴きたくなるものとか、 『このバンドの、この人が好きなんだけど』というものとか。
そんなものを何となく片っ端から再生していったら CD整理がそっちのけになってしまった。 箪笥の引き出しに敷かれた古新聞を読み漁る現象に等しい。
結局整理できたのは10分の1程度。
店のショーウィンドウへ、日に最低1人多くて2〜3人 覗き込んだ勢いで衝突なさる方がいる。 店の中にいればぶつかった音は分かるもので 『コツン!』という小さい音から
『ごぅおおお‥‥んんん‥』という ガラス全部が波打ちそうな派手な音まで、本当に様々。
あまりに凄い音だとこちらが一瞬ひるむのだが、 とりあえず大丈夫かどうかつい顔を出して尋ねてしまう。 そんな時ぶつかった方は大抵バツの悪そうな顔をして 愛想笑いとも何とも言えない笑みを浮かべ、そそくさと立ち去る。 自分から客を逃がしてるのかもしれないとは思っても やはり心配になってしまうのだ。
そのウィンドウを磨いていた午前中のこと。 案の定いくつかの跡がガラスの表面に残っていた。 とりわけ珍しいことでもなく、洗剤をつけて拭こうとした時 1つだけびっくりするような跡を発見。
眉間・鼻・口紅まで残ってる。 しかも口紅は口の形そのままで、『わざとか?』と疑いたくなるほど。 故意にやったのでなければ相当勢いがついていたとしか思えない。
顔拓。
ここ最近出かけていたり自分自身のことで あれこれ考えていたりで、すっかり大事なことを忘れていた。
昔のカレンダーだったら完全にアウトだ。
敬老の日。(ハッピーマンデー万歳!)
お蔭様で私の母方の祖父母が健在なので、毎年好物の干物を贈るのが 常なのだけれども、その手配を全くしていなかった。
もひとつおまけに、その翌日は実父の誕生日。
こっちも手配はまだだから、急いで探さなきゃ。
閉店1時間半前のこと。 たまたま社長夫人は外出中、連休近い週の平日なんて 特に暇なものだから在庫整理も兼ねて店の裏側にいた。
何やら隣の駐車場が騒がしい。 店の裏側と言っても元々玄関先だったところを即席の事務所に してしまっているので、駐車場を隔てるのは青いビニールシート2枚。 お蔭で普段から否が応でも話し声やらエンジン音が聞こえてくる。
と。いきなりつんざくような女のコの声。
『助けてー!殺されるー!!』
あまりに唐突な叫び声に、思わず持っていた箱を落として (見えもしないのに)駐車場の方を見て呆然としてしまった。 っつーか、何事よ。穏やかじゃないなぁ。
様子を見ようにもシートは紐で固定してあるし、店には私だけで 外に出ようにも出られない。 おまけに隣とはいえ、駐車場へはビル2つ分ぐるりと回らなきゃいけない。 どうしようかと受話器を持ちかけた時、更に声は続いた。
『触んないでよ!こっち来ないでよ!』
『いやだから落ち着けって!』
…ん?男の声?
『だからこっち来ないでってば!!』
『お前が潔白だってんなら見せてみろよ!』
もしかして単なる痴話喧嘩? それにしてもこれだけ男女で声量の比率が顕著な喧嘩も珍しい。 完全に男性が押され気味だなと思いながら、こちらも作業再開。
その後女のコが『誰か警察呼んで!』と 喚いて男性が宥める声が遠ざかるのは分かった。 そこから歩いて3分もしないところに交番はあるのに、 全く逆の方向へ歩く程度のスピードで。
この場合、私は警察へ電話するべきだったのだろうか?
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