Deckard's Movie Diary
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2002年07月22日(月)  チョコレート タイムマシン

 それまで刺身のツマみたいな扱いだったハル・ベリーがアカデミー主演女優賞を受賞した『チョコレート』。差別にまみれ、お決まりのコース(旦那が刑務所)から貧乏&子持ちの黒人女性と男尊女卑&人種差別丸出しの白人男性の恋物語。社会の底辺で生きている人間と、それなりに恵まれた環境で古い因習を何の疑問も感じず受け入れている人間。言い方を変えれば、愛と誠。お嬢様とやくざ。女中(女郎)とボンボン。下男と奥様。まぁ、良くある話しと言ってしまえばそうなんだけど、この映画が表現として今までと違うところは、二人の結びつきをSEXそのものに起因させた点にあるんじゃないでしょうか。基本的にはある種のカルチャー・ショックが相手を虜にするっつーワケです。R−15だか17だかの規制がついたSEX描写は生々しく、何処からか、昔懐かしいATGの香りがしたハリウッド映画でした。

※※※※ ネタばれ ※※※※

 親父の意志を継ぎ、刑務所で働く男(ビリー・ボブ・ソーントン)は母親(死亡しているらしい)に似て心優しい息子に目の前で自殺され、それまでの生き方(男尊女卑で、人種差別主義)に疑問を感じ始めていた時、夫(死刑)と息子(交通事故)を次々と亡くし、生きる目的を失っている女(ハル・ベリー)と出会う。全てを失った女は人の温かさを求め、ほとんど動物的な本能で男を欲する。それまで、おそらくはSEXは自分勝手な性的処理の手段としか考えていなかった男にとって、それは生まれて初めて経験するSEXだったに違いない。相手の体温を感じ、相手の心を感じるSEX。息子に目の前で自殺され、息も出来ない苦しさから解放してくれる人間の熱情としての温もり。人はお互いの弱さを認め、寄り添い、支えあって生きていくもの。主人公はあくまで男なんだろうけど、その男を再生させた女はやっぱり偉い(笑)。女はあくまで最初から最後まで普通の女であった。それこそがこの映画の素晴らしいところで、逆に言えば、結局は情けない男の物語というコトになる。ああ、なるほどやっぱり、そういうコトなのね(苦笑)ビリー・ボブはもちろん上手いんですけど、狂言回しとしての女性を女として演じきったハル・ベリーも素晴らしかったです!星を見上げるラストシーン。ささやかな幸せを願いたくなりました。静かなる傑作。また、原題『MONSTER’S BALL』より邦題『チョコレート』の方が似合っているような気がしたのは小生だけではないでしょう。監督はサンダンス映画祭で注目を集めた新鋭・マーク・フォスター。封切り三日目といえ、平日2時半からの回で立ち見でした。マジっすか♪〜( ̄ε ̄;)

 H.G.ウエルズの末裔らしいサイモン・ウエルズ監督作『タイムマシン』。主演、売り出し中のガイ・ピース。以上!おしまい。
え、他に書くコトないのか?って、うーん、別になぁ。面白くないよ。ウエルズもしょーもない末裔を持ったもんだよなぁ。本人は「小説に忠実に映画化出来た!」とか言っていらしいけど、馬鹿じゃないの!小説を忠実に映画化するほど失敗する!ってコトくらい気がつけよ!結局何が言いたいのかサッパリわからん!つまんねぇー!(爆)


2002年07月18日(木)  ダスト

 デビュー作『ビフォア・ザ・レイン』でベネチア金獅子賞他10部門受賞、さらに各国で30以上の賞を獲得したミルチョ・マンチェフスキーの7年ぶりの新作『ダスト』。予告編から不可思議な映像の連発で、かなり興味をそそられていたのですが・・・まぁ、『ビフォア・ザ・レイン』も一風変わった時間軸でしたからねぇ。前作は個人的にはちょっとダルかった印象でしたが、本作は・・・?こっれはスゲェ!っつーか、良くぞ映画化した!というか、20世紀の100年に渡る物語をビシっとまとめた監督の演出力に完璧に脱帽!前半は物語が散らばっていて、ちょっと取っつき難いのですが、中盤からは全ての登場人物がボディブローのように体の中に沁みこんできて、物語は大きい波のうねりと変貌します。それにしても、よくもこんなストーリーを考え出すなぁ。考えたとしても、まとまらないものなぁ・・・・ボソ。胸の深いところでジワっと泣けました。映画の宣伝コピー「誰か、私という物語を覚えていてほしい。」が身に沁みます。万人ウケはしませんが、カルト・ムービーとして世に残っていく映画でしょう。惜しむらくは銃撃シーンが長くて、ちょっと閉口しちゃったかも・・・・。


2002年07月16日(火)  この素晴らしき世界

 2000年度のチェコの最優秀作品賞を受賞し、アカデミー外国映画賞にもノミネートされた『この素晴らしき世界』。久々の岩波ホールです。ナチス支配下のチェコで暮らすヨゼフとマリエの夫婦、そして彼らを取り巻く様々な人達。チェコが解放されるまでの歳月を思いやり深く描いています。この映画は戦時下における普通の人々の弱さ、強さ、狡さ、賢さを、哀しくも可笑しい人間の本質として、等身大の目線でとらえています。人って、自分を取り巻く状況によって、いい人にも悪い人にもなっちゃう小市民なんですよねぇ。はい、告白します。この映画のあちこちに自分が居ました(笑)ラストは複雑ながらも、清々しい感動に溢れ、「ああ、観てよかったなぁ・・・」という気分になりました。何だかんだ言っても、人間って逞しいッスよ。しかーし!この邦題はどうにかならないんすかねぇ。原題は「私たちは共に助けあわねば」。ホルストのマルコ伝からの有名な言葉「手を携えよ、さもなくば滅びん」からきているそうです。まぁ、この映画自体、ある意味かなり宗教色が強いですから、その辺がハナにつく人もいるかもしれません(苦笑)


2002年07月15日(月)  ケンタッキー・フライド・ムービー

 40代に入ってから記憶障害と闘い続けている小生は、最近、観たことのある映画か、否か、区別がつかなくなっているようで・・・・お恥ずかしい限りです。トホホ。で、今回のお題映画は『ケンタッキー・フライド・ムービー』。観た記憶はあるんだけど、ハッキリして無い部分も・・・・で、確認しに行ったのですが、これがもう3分の1くらいは完璧に観てるんですよ。でも、残りの3分の2がねぇ・・・。77年作ですけど、公開はいつなんだろう・・・。小生は社会人になったのは78年。その頃、会社の2年先輩に超ヘンテコな人が居まして、とある大学院で助手の経歴がある人なんですが、この人のやってた研究?っていうのが、教授が外国から買ってきた8ミリを4分の3のビデオに綺麗な色のまま変換するという、今で言えば「テレシネ」という作業でして、で、8ミリの中身ってのはほとんどがブルー・フィルムって奴ですから、それをまた横流ししたりして小遣いを稼いでたような輩で・・・って、文章が終らなくなっちゃいますので、止めますが、その人がブルーフィルムの他に教授から御褒美でもらっていたのが洋画のビデオ(もちろん4分の3)だったワケです。一体何が言いたいのかというと、その頃ってのはマジで忙しく、でも新しい映像や表現には飢えてましたから、暇があれば、何でもかんでも観てたんですよ。で、そのドタバタな時期に『ケンタッキー・フライド・ムービー』もそんな怪しいビデオの中から掻い摘んで観てたんじゃないかなぁ・・・と、だから中途半端な記憶になって残っている!と結論を出しました。(出しちゃったよ!)映画は懐かしかったですねぇ。若かりし頃の悪戯を見ているようでした。まぁ、その後のヴァラエティ番組で使い古されたようなネタばかりですけどね。しっかし、オイラの隣で観てた20代と思しきデブ女3人組。最初からズーっと笑いっぱなし!グリーンドアもキラーハットも知らないだろうに!ヘンなの?


2002年07月11日(木)  ガウディ・アフタヌーン

 知り合いの女性二人が一緒に観に行って「とっても良かったよ!」と言っていたので、ひょっとしてヤバイかも?(って、何故なんだ!)って思っていたら、ヤバかった!(笑)映画名は『ガウディ・アフタヌーン』。だって、ワザとらしい事ばかりなんだもーん!だいたい何故にガウディ?それに、どう考えても無理のあるキャラ&ストーリーのオン・パレード!全く共感できる部分はありませんでしたねぇ。それでも、女性にはウケるんすかねぇ?


2002年07月09日(火)  ラッキー・ブレイク 月のひつじ

 『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督最新作『ラッキー・ブレイク』。誰かが言ってましたが、刑務所モノが続きます(笑)ストーリーは、脱走する為にミュージカルを上演する囚人達の物語。『フル・モンティ』を期待するとガッカリしちゃいますが、普通に面白いです。ただ、全体に温いんですよねぇ。長く感じちゃう。基本的に、予定調和なストーリー展開は見えてるんで、どうやって観ている者を引っ張るか!ってコトになるんですけど、その辺りの魅力に乏しいんですね。それはやはり、普通の恋愛モノに話しが寄りかかったからじゃないのかなぁ・・・・。

 アポロ11号月面着陸の裏で、人知れずてんてこ舞いしていたオーストラリアの田舎町パークスでの感動実話『月のひつじ』。1969年、人類初の月面歩行の衛星放送を任されたのは名もない田舎町にある南半球最大のアンテナだった。これは面白い話なんですよ。でもね、演出が下手!余計な話しとか多いし、上手くラストへ向かって昇華していかないんですよねぇ。それでも、それなりに感動出来るんだから、本当に上手い監督が作っていたら、『遠い空の向こうに』位の感動作になってたのに!惜しいなぁ!


2002年07月08日(月)  es

 評判が良くて単館から2館になった『es』。映画の元ネタは1971年、米スタンフォード大学で行われた実験で、新聞広告で集められた24人を無作為に「看守役」と「囚人役」に分け、それぞれの役割を演じさせる事。当初2週間の期間が予定されていたのだが7日間で終了。その後、この実験は禁止!一体何が起きたのか?で、この映画がその実態のようなモノを描いてるみたいんなんですけど・・・。観終わって最初に思ったのは「こんなに人間って馬鹿なの?」。まぁ、オレが楽観主義者なんでしょうけどね。ちょっと強引な展開に納得出来ませんでした。またサイドストーリーの部分は全く不要!


2002年07月05日(金)  ブレイド2

 けっこう面白いじゃん!巷の評判はあまり宜しくない『ブレイド2』。確かにハリウッドでのワイヤー・アクションの火付け役になった前作に比べると、ドニー・イェン演出のアクションシーンはググっと引っ込んじゃったので、ある意味別の映画?って感じですけど。でも、個人的にはこちらの方が好みだなぁ。ストーリーはさておいて(笑)、中々魅せます。暗いシーンが多くて眠たくなる・・・という意見もごもっともですが、映像としては『遊星からの物体X』『エイリアン2』辺りに近いモノもあります。ラストシーンもけっこう好きだったなぁ。まぁ、CGアクションはいただけなかったけどね(笑)


2002年07月03日(水)  青い春

 全く印象に残ってないんですよねぇ、ビッグコミックスピリッツで連載されていた松本大洋原作の『青い春』。映画は監督・脚本:豊田利晃、主演:松田龍平。予告編で見て、「こういう映画なのかなぁ・・・・」と思ったとおりの映画でした。結局は何もない。ただ屈折した青春像を描写しているだけで、お決まりのラストが待っている。基本的に焦点が絞れていません。グループなのか?二人なのか?不良の青春なのか?不良の友情なのか?まさか不良グループの中の二人の友情モノだったりして?だとしたら陳腐だなぁ。シーンだけを追ったってそんなモノは描けませんよ。定点で朝まで撮影する事にナンの意味があるのかサッパリわかりません。でもこの映画の一番ダメな部分は被写体(描くモノ)に対して愛が感じられないところ。自分が描くキャラ、自分が作り出すキャラ。もっと深く考えてあげれば、もっと魅力的なキャラになると思うんですけどねぇ。別に「語れ!」と言ってるんではなく、役者の表情一つで変わることだってあるんですから。


2002年07月02日(火)  プレッジ

 『アイ・アム・サム』で役者としての存在感を見せつけたショーン・ペン監督作第三弾『プレッジ』。細部に渡って実に丁寧な作りで、一滴の水も漏らさぬような緊張感のあるシーンが幾つも積み重なり、まるで無数のカットで構築された木造建築のようです。中盤からは、計算されつくしたカットバックの挿入によって、真綿で首を絞めるかのように観ている者を不安の中にどんどん閉じ込めていきます。物語は、雪の夜に一人の少女の遺体が発見され、その母親と真犯人を突き止める約束(プレッジ)をした退職間近の刑事。事件を解明していくうちに・・・。本当に良く出来た映画なんですが、前半部の一番大事なシーンが意外とアッサリしていて、後半までそのシーンの印象が持続しませんでした。またラストシークエンスはかなり好き嫌いが分かれるでしょう。個人的には、あんまり好きじゃないです。しかし、この映画は主演のジャック・ニコルソンを始め、サム・シェパード、ロビン・ライト・ペン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ミッキー・ローク等、観ておいて損はない豪華役者陣なんですよ。極めつけはナンと言ってもデル・トロさん!す、す、凄いッス!


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