Deckard's Movie Diary index|past|will
『ピニェロ』これはもったいない映画でした。ピニェロとはミゲル・“マイキー”・ピニェロというプエルトリコ生まれの詩人で、サルサのリズムに乗せたそのポエトリー・リーディングはラップの原型だとも言われているそうです。そのストレートでシニカルでウィットが利いていて、時に暴力的な詩は、初めて触れた人にも十分説得力があり魅力的です。また、ピニェロを演じるベンジャミン・プラットはまるで本人(知りませんが(>_<)アチャ!)が乗り移っているとしか思えない素晴らしいパフォーマンスで、観客を魅了します。ああ、それなのに!なんなんでしょ!この演出は!過去と現在が行ったり来たり、何の脈絡もなくカラーになったり白黒になったり!何を狙っているのか全く分かりません!どんなに素晴らしい素材でも監督がヘボだと駄作になってしまう典型的な作品。傑作になったかもしれないのに!(´―`)┌ ヤレヤレ… ニューヨークのプエルトリコ人のコトを“ニューヨリカン”と呼ぶんですねぇ。知りませんでした。プエルトリコを代表する女優、あのリタ・モレノがピニェロの母親役で出演していました。
予告編でダメダメ光線を撒き散らしていたのでスルー決定にしていた『ニューオーリンズ・トライアル(キューザック、ワイズ、ハックマン、ホフマン)』。だいたい『コンフィデンス(バーンズ、ワイズ、ガルシア、ホフマン)』と一緒くたになってるしぃ〜(自爆)。ところが、友人に「上玉ですぜ!旦那!」と耳元で囁かれたんで、フラフラと観に行ってしまいました(苦笑)。これは拾いモノでした。面白かったですねぇ!個人的には『シービスケット』より面白かったですキョロ(・_・ ))(( ・_・)キョロ。監督のゲイリー・フレダーの前作『サウンド・オブ・サイレンス』はどーでもいい映画でしたが、今作では語り口が上手く緩急の付け方も申し分ありません。おそらく脚本も良く出来ているんだと思います。原作はタバコ訴訟になっているそうですが、そういう意味では脚色が巧いのかもしれません。ハリウッド正統派のドラマを観た気がします。個人的には、こういう映画に飢えていたのかもしれません。観終わった後に懐かしい気持ちになりました(苦笑)。レイチェル・ワイズが中々良い味を出していて、ちょっと驚かされました。それにしても、こんなに面白い映画なのに全く客が入っていません!もったいない!というか、映画マスコミはもっと宣伝するべし!何が面白くて、何が面白くないか・・・分かってないんだろうなぁ・・・っつーか、そういうコト考えてないんだろうなぁ・・・。
『25時』・・・タッチストーンのロゴマークから一瞬にして観客の心臓を鷲掴みにして、ギザギザな印象を残す強烈なファースト・シーンへ。金縛りにあったような錯覚を憶えながら見入っていると、静かな水面が一気に濁流と化して襲い掛かってきます。スパイク・リーは物凄い傑作を作ったのかもしれない・・・という思いがジンワリ・・・。主人公の最後の夜、彼を取り巻く登場人物達・・・垣間見える人間性、それぞれの別れ方。誰がどうしようが、何をしようが、結局は自業自得。落とし前は自分でつけなきゃ!あくまでもリアルに適度な緊張感を維持しながら、映画はエンディングへ。スパイク・リーの落とし前は?映画としては尻すぼみの印象が拭えません・・・それはリアル過ぎたからかもしれない。そして、いつも感じるのですが、スパイク・リーの映画を細部まで理解するにはドメスティックな日本人のオイラにはハードルが高すぎるのかもしれません・・・。それでもこの映画は一見の価値があり!個人的にはバリー・ペッパーに1票!
『猟奇的な彼女』で日本にも旋風!?(古いなぁ・・・)を巻き起こしたクァク・ジョエン監督最新作『ラブストーリー』。キャッチは“韓国中が涙した、時を越えた運命の物語”というモノなんですが、そのまんまのストーリーのベッタベタな恋愛モノでした。それでも個人的には十分楽しめました。この監督はストーリーと関係ない細かいところでちょこちょこ遊びを入れるんですけど、それが好きなんです(苦笑)。『猟奇的な彼女』の時に次郎長親分が「少女コミックが大丈夫な人はOK!でしょ」と言ってたんですが、この映画もまさに、遠い昔・・・高校生の頃に読んだ少女コミックの世界がスクリーンに広がります。まぁ、そんな内容ですから目くじら立ててもねぇ、大人げないですよ〜!(笑)っつーコトで、幾らなんでも出来すぎ&やり過ぎのストーリですが、オイラは好き(/・_・\)アチャ〜! テス役のイ・ギウ・・イイ味出してます。
『ロード・オブ・ザ・リング・二つの塔/スペシャル・エクステンディッド・エディション』ってタイトルからして長いですが(笑)、こちらも今バージョン(追加シーンは43分!)の方が圧倒的に良かったです。とにかく登場人物が丁寧に描かれているので、それぞれの背景が良く分かります。1作目で不完全燃焼していたボロミアの苦悩や、2作目で曖昧だったエオウィンの心模様(それを受けるアルゴランの心情もまた1作目のエクステンデッド・エディションでアルウェンとの関係がキチンと描かれていたので、深く感じる事が出来ます)も、このバージョンを観るととても良く分かります。またボロミアの弟ファラミアの存在感も比べようもありません。以前の『二つの塔』の感想では「結局この映画の欠点は長すぎるコト!どうしてこんなに長くするのか全く意味不明!無駄なシーンが多過ぎます。どう考えても後30分以上は短く出来ると思いますよ。だから、大仰な雰囲気ばかりが目立って、映画のテンポとしてはダルいんです。」なんて書いてますが、おそらく人物描写が中途半端なので無駄なシーンに見えてしまい、冗長に感じてしまったのでしょう♪〜( ̄ε ̄;)。上映時間が長くても、キチンと描かれていればそれに越した事はありません。3作目の『王の帰還』も、後からエクステンデッド・エディションが出るのでしょうか?最初からキチンと見せて欲しいモンです。それにしてもゴラムはため息が出るほど素晴らしい!で、余談ですが、エントに関してはやはりイライラしました(笑)。
待ち遠しかった『シービスケット』!噂に違わず良い映画でした。主要3人の登場人物が出会うまでの語り口はテンポが良過ぎてダイジェスト版を観ているような印象がありましたが(30年代の不況を背景にしているので余計にそう感じました)、後半を生かすのにはアレで良かったのでしょう。タイトルの『シービスケット』は、もちろん馬名ですが“馬名”というより“象徴”として捉えているようです。“馬”そのものに余計なコトというか、過剰な思い入れというか、人間の気持ちを理解しているフリのような・・・しょーもないセンチメタリズムが無いのも好感触でした。馬は人の思惑で走っているのでありませんし、シービスケットの走りに元気づけられようが、それは人間の勝手な思い込みなワケですから。競馬を語らせたら右に下がる者なし(なんじゃ、そりゃ!)の小生の突っ込みどころは、あの時代にモンキー・スタイルで騎乗していたのか疑問ですが、それは気になる事ではありません(っつーか、モンキー乗りの方が画になりますしね)。しかし、騎手のアップになるとやたらと手を動かしているのはちょっとねぇ・・・だって、モンタージュとしてもオカシイでしょ。レース・シーンが素晴らしいだけにちょっと残念。クリス・マッキャロン(レース・デザインを担当した殿堂入りの有名ジョッキー)は何をしていたんでしょうか(笑)。とまぁ、どーでもイイことですが(自爆)。で、この映画の最大の欠点は話が出来過ぎているところです。実話だから仕方が無いのですが、ストーリーが嘘臭く感じてしまので、何処か軽い印象が残ってしまいます。しかし、長年競馬を見ていると・・・例えば古くはトウショウボーイとテンポイントのマッチ・レースとか、そのトウショウボーイとシービークインの運命とか、奇跡の復活!と言われたオグリキャップやトウカイテイオーのレースとか、信じられない光景を目にする事が少なからずあるので、実際には不思議なコトでもないんですけどね・・・ボソ。結局は自分の目が曇りガラスになっているというコトなのでしょう(苦笑)。ウィリアム・メイシーが脇でいい味出してますが、トビーの痩せっぷりも見事でした。ウルフ役のゲイリー・スティーヴンス(殿堂入りの現役ジョッキー)はちょっと年齢が高いんじゃないかなぁ・・・レッドと同い年のはずなんだけど・・・ボソ。
『タイムライン』・・・原作はマイケル・クライトンだそうです。でも、あんまり関係ありません・・・まぁ、リチャード・ドナーですから!観終わって、最初に思ったのは“普通に面白いじゃん♪”だってリチャード・ドナーですから!細かい辻褄なんかはスっ飛ばしてアレもコレもの合わせ技イッポン!で大味な娯楽大作技で決めてます。ナンてたってリチャード・ドナーですから!特にSFってワケでもないですが、戦闘シーンは投石機の迫力も十分で「おお!」って楽しめます。もちろん、リチャード・ドナーですから!タイムスリップには絶対必要な“だからこうなった!”話もしっかり押さえてあります。さすがにリチャード・ドナーですから。しかし、もう少し面白くなったような気もします。やっぱ、リチャード・ドナーですから!というワケで、思いっきりリチャード・ドナーでした(笑)
『解夏』・・・この映画を観て一番良かったコトは“解夏”の意味が理解出来たコトだけかもしれません(個人的には石田ゆり子って好きなんで、問題ありませんが・・・って、どういう意味だよ(自爆))。“解夏”とは、禅宗の修行僧が夏の90日間に修行をするそうなんですが、その最初の日を“結夏(けつげ)”と言い、最後の日を“解夏”と言うそうです。で、『解夏』です。上辺をさら〜っと汲み取っただけの薄〜っぺらな映画でした。監督の磯村一路は『がんばっていきまっしょい』で鮮烈な印象を残したのですが、以後は尻すぼみです。ピンク映画や日活ロマンポルノで培ったモノをもっと押し出してイイんじゃないですか!別に濡れ場を見せろ!って言ってるワケじゃなくて・・・もしオイラが目が見えなくなる!という状況に陥ったら大好きな彼女の顔を手の平で触り捲くります。触感で憶えようとします。誰もがそういうコトをするとは思いませんが、もっと切羽詰った二人だけの表現があると思うのですが・・・・こんなTVドラマみたいなあっさ〜い演出って恥ずかしくないのかなぁ・・・と、思ったらフジTVが製作に絡んでるんですね(苦笑)。石田ゆり子・・・下手だなぁ・・・ボソ。
監督の成島出は『シャブ極道』の脚本、『少女』『笑う蛙』脚色等、個人的にちょっと気になる仕事をしてきた人で、今回の『油断大敵』が初監督作になります。捕まえる奴(関川仁/役所広司)と逃げる奴(ネコさん/柄本明)、二人の関係を軸にホロっとさせるストーリーですが、ホロっとはしませんでした(苦笑)。刑事と泥棒、父と娘、生い立ち等の話が描かれるのですが、それぞれが上手くリンクしてきません。妙にテンポが悪くなる部分もありますし、なんだかチグハグな仕上がり具合でした。決して悪い映画ではありませんが、もっと面白くなった余地も十分感じられる為に残念です。因みにこの話しは実話が下敷きになっています。余談ですが、相変わらず夏川結衣はいいですなぁ・・・ボソ。
『奇人たちの晩餐会』『メルシィ!人生』のフランシス・ヴェべール監督最新作『ルビー&カンタン』。今回はちょっと期待値低めで観に行った方が良いかもしれません。やはりヴェベールと聞くと期待しちゃいますからねぇ・・・もちろん水準はクリアしているんですが、それだけなんです。だから悪い映画ではありませんが、ちょっと物足りなく感じます。ジェラール・ドパルデュー演じるお喋りな天然バカとジャン・レノ演じる無口な一匹狼がひょんなことから・・・みたいなストーリー。ドパルデューの素晴らしい演技とヴェベールのテンポの良い語り口で、ケラケラと笑っている間にサクサクと映画は進み、あ!っと言う間にエンディングです。あまりにアッサリ終わってしまい、あれ?コレで終わりなの?・・・ちょっと肩透かしを食ったような気分になってしまいました。それもこれも今までの作品のレベルが高かったからなのでしょう。今作も十分に及第点なんですけどねぇ・・・それにしてもドパルデューは上手いですわ!因みに原題の『Tais-toi』は「静かに!」という意味だそうです。
デッカード
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