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第8話 リンダ - 2002年03月03日(日) 夜がやってきた。 街は昼の顔とはまったく違う怪しげな 顔で語りかけてくる。 凶暴な情熱がニューヨークの夜をかけていく。 そして、一人の男が場末のバーの重い扉を 押し開け、カウンターに倒れこむようにして 腰をおろした。 「ホットミルク、ひとつ。」 ブライアンだ。 娘の誕生日プレゼントを買いにニューヨークに やってきたのはいいが、結局プレゼントを買う どころか家にも帰れなくなってしまった。 ブライアンはもうへとへとだった。 そこへ、どんな服を着ても隠し切れないナイスバディ のウエイトレスがホットミルクを持ってきた。 「どうしたの、疲れてるみたいね、 あたしのホットミルクでも飲んで元気だして。」 意味深な言葉だった。 女は胸元を大きくはだけ、ブライアンの頬に近づけてきた。 女の名前はリンダ。 幼児期のある影響で、若い男には興味がいかない不幸な女。 リンダはブライアンをあらゆる手で誘惑するつもりだ。 ブライアンはカウンターに手を放り出し、 お疲れモード。 あぶない、ブライアン。いや、ラッキーブライアン。 しかし、どうする。 こんなことをしていていいのか。 立ち上がれブライアン、歌ってお願いブライアン。 つづく - 第7話 アメリカ - 2002年03月02日(土) 「ぼくは風よりも早く、空をかける ララララ♪ 宇宙一の力もち♪ どんなやつでもかっかってこい♪」 世界唯一の超大国アメリカ、 アメリカ英語は中国語を押さえ込み、 世界の共用語として機能している。まるで世界を支配するかのように。 そのアメリカの中心、ニューヨーク、セントラルパークの中を 1台の自転車が走り抜けていく。 しかし、かなり遅い。 さらに、その車輪の両側には補助輪がついている。 陽気に歌うその歌声、どこかで聞いたことのあるメロディ。 確かこれは、ビーチボーイズのサーフィンUSA. 替え歌だ。 そして、歌っているのはもちろん、ぼくらのブライアン。 彼はかなりのスピードでこのニューヨークを走り抜けて いるつもりだったが、ジョギングしている70を越えると思わ れる老人夫婦にあっというまにぬかれていった。 今日のブライアンはお買い物。 愛する娘への誕生日プレゼントを買いに街にやってきた。 しかし、もう日が暮れる。朝の7時に家をでたブライアン。 セントラルパークをぬけるのはいったいいつになるのやら。 アメリカが生んだ偉大な才能が今ニューヨークをかけていく。 急げ、ブライアン。ニューヨークの夜は厳しいぞ。 アメリカの誇りを取り戻せ。 思い出せブライアン、歌ってブライアン。 つづく - 第6話 ミッキーマウス - 2002年02月28日(木) 「ミッキーマウス、ミッキーマウス僕の大好きな ミッキミッキマウス。」 部屋中に響き渡る子供のような声。 いったい誰が歌っているのかな。 もちろん、僕らのブライアン。 大好きなディズニー映画を見ているブライアン。 特にお気に入りはミッキーマウス。 もう2時間もテレビを見ながら歌っている。 ジェニファーもお手上げ。 しまいには、ソファの上で手を頭の上に のせてミッキーの真似をして踊りだした。 テレビのリモコンが転がり落ちた。 チャンネルが変わって派手な画面に変わった。 グラミー賞の授賞式だ。 「特別栄誉賞、ブライアン、おめでとう。 素敵な音楽をありがとう。ブライアン。」 司会者が高らかに声をあげた。 会場から割れんばかりの拍手がおこった。 「あっ、わすれてた。」 ステージにはマイクラブが代わりにあがってきた。 「こいつ、マイクのやつ、もう遊んでやんないぞ。」 ぷんぷんのブライアン。 ブライアン怒ってる場合じゃないぞ。 陽気に踊っててどうする。 みんなが待ってるぞ。 立ち上がれブライアン、歌えブライアン。 つづく -
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