崖の上に住む人がいた。 その人は広がる足元の大平原に何があるのか知りたかった。 崖の下に住む人がいた。 その人は崖の上に何があるのか見てみたかった。 二人は同時にそれぞれ崖を上がりそして下った。 下るのは足元が今にも崩れそうで恐ろしかった。 上がるのは手元が掴むのが難しく息が切れそうだった。 それでも二人は何とか半分ずつ上がりそして下った。 崖の下の人に崖の上の人は声をかけた。 「あなたは崖の下から来たのですか」 崖の下の人はその声に驚き手を滑らし落ちてしまった。 崖の上の人は落ちたのを見て怖くなり崖を降りるのをやめ 崖の上へと戻ってしまった。 崖から大平原に人が行き来をするようになったのは それからまだ三百年の後のことだった。
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