けんたのプロレス&演芸論
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2004年01月01日(木) M-1グランプリ2003を見て(その1)

 今回のM-1はレベルが総じて高かったように思う。参加者の賞取りへの意識が高まったからだろうか。見る側としては歓迎できることだ。数回に分けて、決勝の各参加者の漫才について、またその周辺について書いていきたい。

まずは決勝1回戦、出演順に。


① 千鳥  (522/700、9位) けんた採点:75点

 岡山弁漫才。二人のキャラと岡山弁がいい具合に被っていて、「ああ、面白いコンビだな」と思わせる。ネタの運びも独特のリズム、緊張していたというよりは、こういうリズムなんだな、という説得力があって、見ていて和む、という言い方は失礼なんだろうがそんな感じ。
 個人的に気に入ったのは、ラサール氏もあげていた、「演劇的なもの」。東京の劇団が好みそうな間合いを持ち込んだ(彼らにその意識があるかは別として)のは新鮮だった。今後に期待。
 今回の成績については、事前番組で島田紳助が懸念していた、「変化球投手がハナをきる」ことのマイナス面がモロに出てしまった感じ。客が温まらない状態で、このコンビは正直きついのか。ネタ選びもずいぶん思い切った(要はエロ)ものを選んだことはプラスにはならなかった。ネタ順の不運を嘆くのもありだと思うが、今後を考えれば反省点として受け止めてほしい。変化球投手がうまくハナをきる方法は、きっとあるはずだから。



② 麒麟  (554/700、8位) けんた採点:85点

 この麒麟の漫才で8位、というところに今回のレベルの高さがあらわれている、といってもいいくらいによく出来ていた。一昨年の漫才は実験的要素もあって驚きが強かった、その分今回は損した感じかもしれない。今回は良くも悪くもまとまった印象、良くも悪くも「うまくなったなあ」、個性の強さが千鳥に持って行かれた分、点数が伸びなかったか。
 個人的にはかなりツボだった。ボケの人の特徴的な声は、充分武器になる。「ウイルスマン、ドキンマン、アンド、モーガンフリーマン」はかなり好き。また、ここのコンビは一昨年もそうだったが構成が緻密だ。よく出来てるなあ、という印象が、面白さに勝ってしまったのかな・・・。
 出演順を見越してのネタの用意、個性の打ち出し方を工夫してほしいところ。というか、そういう部分に無頓着(なように見える)コンビが多いのが気になるなあ。あの中川家やますだおかだでさえ「前の組の漫才は見ない」的なことを言っていた。漫才全盛期のやすきよ・セントルイス・B&Bの三組会(「漫才新幹線」)の舞台裏のVTRを見たことがあるが、彼らはモニタを凝視し、「こいつらがこうやるなら、俺らはこうだ!」とばかりに発奮していたシーンが、頭をよぎる。M-1は漫才の格闘技ではなかったか。相手を打ち負かす気概のあるコンビが、彼らの中にどれだけいただろうか。


③ スピードワゴン  (572/700、6位) けんた採点:80点

 ボケのキャラがたっていて、その上ツッコミのキャラも面白い、それでも漫才は面白くなりきらない、というのが難しいところ。各審査員も平均的な点数にとどまっている。あえて一言で言うなら「華がない」ってことなのかな。華、というよりは毒、なのかな。内容的には毒吐き漫才的な要素があるのに、そう感じさせないのは彼らのキャラなのだろうし、TVタレントとして売り出してる彼らにはそれくらいのスタンスがちょうどいいのかもしれない。「憎めないやつ」でいる限りは漫才で天下は取れないかもしれないが。
 とはいえ、ネタは面白かった。個人的には、童謡や童話、昔話をいじる漫才は好きではない(だってみんなやってるんだもん)のだが、彼ら流の味付けがしっかりしていてよかったように思う。ツッコミの「あたしゃみとめない」「うちらの手に負えない」あたりのフレーズは結構ツボ。
 こういったコンテストでは、彼らのスタンスは中途半端にうつってしまう。ぎらぎらしたものを感じさせないのは彼らのスマートさだが、そこが最終決戦進出の三組との決定的な差であることも確かだ。


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