BACKINDEXNEXTZIZZI
≫2005年05月20日(金)≫バゴアスのこと

アレクサンドロスと少年バゴアス
後半もどかしさ故数カ所斜め読みではあったけど未明頃読み終わってね、切なくて切なくて悲しくてたまんなかった。涙止まらなかったし、今でも思い出して目が潤む。実は昨日の夕方頃4分の3くらいまで読んだところで一度感想を書こうと思ってアグレッシブなバゴアスについてとか長々書いてたんだけど、神のお告げかバゴアスのお告げか大王のお告げか多分バゴアスの、だと思うけどPCが固まって全部消えちゃったんだよね。今考えて、あんな文章消えて良かった。何もわかってなかった。信じられないバゴアスの気持ちを、好きとかいいつつきちんと考えてなかった。本当に申し訳ない。この本、描写がとても映画のそれと似てる気がして、映画は大王が中心に心情描かれてるけど、この本は中心がバゴアスになった、という粋な違いだけで、大王について語られてる(いや、違いはもっとあるだろうけど、ナオにとって大したことではなかったよ)。だのでナオは途中から完璧に話をシンクロさせて読んじゃってました。そしてあの映画ではさ、大王とヘファイスティオンの世界がお互いだけで完結してる、みたく感じられて、その関係がナオは大好きだったから、この本を読んでてバゴアスが積極的に大王に近づいて、大王も喜んで受け入れちゃうところなんか、バゴアスやったね、と思う反面、コラー!と素直にイラついたりなんかもして、だけど今思えば、そうすることしかできなかった、バゴアスが悲しくて痛い。それでも大王は精一杯の愛を惜しむことなくバゴアスに与えてたのは本当だと思うし、それは十分にバゴアスも感じてただろうけど、だけど決して、バゴアスは大王のパトロクロスにはなれない。後半、そのどうしようも出来ないところで、だけどバゴアスはひたすらに大王を愛し続けた、っていう事実がもうとんでもなく悲しくて、愛しくて、苦しいんだよ。こんな話、知らない。


文章メモ

 その時までどう感じていたのかわからない。おそらく王の凄まじい怒りに畏怖の念を抱いただけだろう。殻の中で生きるひよこは外の世界を知らない。白いものが壁をとおってくるが、ひよこはそれが光であるのを知らない。しかしひよこは何故か白い壁を叩く。稲妻がその心臓を打ち、殻は破れる。この方こそわが主君。このお方にしたがうため、私は生まれた。私は「王」を見つけたのだ。そう思った。アレクサンドロスが立ち去るのを目で追いながら、たとえそのゆえに死んでも、私はこの人を得よう。そう自分に言い聞かせた。P138

 それに比べて私は一体何者か。人が耳に飾る花、夕べにはしおれて捨てられる花にすぎないではないか。言葉もなく私は泣いた。私の心ばかりか、目にも涙が溢れているのに気づかなかった。P187

 私は寝台に身を投げて泣いた。こうと決めたら必ず実行するお方。長い歴史をもつ、もっとも古い民族である嘲笑的なエジプト人について考えた。彼らは王をあざ笑うだろう。思い出した。王ご自身がすでに神である。太陽神は王を神と認めた。ヘファイスティオンなしには、王は不滅性にさえ耐えられない。P399

 王が去ってしまわれてから、私は台座から厳かに見つめているいくつもの像を眺め回した。「王を放してください!まだ満足しないのですか?あなたはご自分の過失で死んだ。言いつけに背き、あせって欲張ったから死んだ。王にご苦労をかけるなんて、あなたは王を愛していないのですか。でしたら王を私にお任せなさい。私はだれよりも王を愛しているのですから。」像たちは一斉に私を見返す。「さもあろう。だが私は王のすべてを知っていた。」P418

 私はヘファイスティオンの像を眺めた。どうして今ここにいないのですか。お役に立てる時に。「馬鹿を言うな。たとえ力ずくでも休ませずにおくものか。バゴアス、王は伺えませんとメディオスに伝えてくれ」と言ってくださればすむものを。p419

 王の生命力は常にだれよりも強かった。心臓に触れてみたがむろん無駄である。息をなさらないから鏡も曇らない。とはいえ王のどこか奥深くに魂はまだ残っていて、去っていく準備をしているもののまだそこにおいでなのかもしれない。私はもはや聞いてくださらない王の耳にではなく、そのどこかに向かって話しかける。「神々の元へお発ちください。征服されぬアレクサンドロスよ。試練の河があなたにとって乳のように穏やかでありますように。あなたが炎ではなく光を浴びられますように。あなたの死が、あなたを許しますように。あなたは死をもたらす以上に、人々に生をお与えになりました。神は草を食むように雄牛を造られましたが、獅子をそのように造られませんでした。神のみがその優劣をお決めになりましょう。あなたは常に愛をもっておられました。あなたが行かれるところに愛が待っていますように」P432

 やがて彼らは交渉に入り、ご寝所を出て論議をつづける。手拭いで腕をしばって待っていた。王に付き添う人がいないのはよろしくない。明かりを灯して寝台のかたわらに置く。朝になり、木乃伊の係りが王のお体に永遠の没薬を詰めにくるまで、私は王を見守っていた。P433




BACKINDEXNEXTZIZZI

   
Design by shie*DeliEro