保育園で避難訓練があり、近くの中学校まで行ったそうだ。2歳児は先生たちが分担して手を引き、連れていったらしいのだが、どうもルンバ、今日は歩く気分じゃなかったらしい。年齢のせいもあるだろうけれど、気分屋なところがあるルンバは、気持ちが乗らないと、ひたすら脱力で、ちっとも歩こうとしないのだ。 連絡帳には 「だるそうに歩いてひっぱられていました」 と書かれていた。 それを見た時は、あーあ、しょうがないな、くらいに思っていた。
翌朝、登園すると、ちょうど保健の先生が教室にやってきたところだった。最初に話題になったのは、ルンバの虫刺されのあまりのひどさ。腕も足も顔も、とにかく、ありとあらゆるところが刺されて、ものすごい状態になっている。園でも気付いた時には虫よけやかゆみ止めを塗ってくれるそうだが、それでも防ぎきれない。しかもかいてしまうので、刺された周辺が湿疹みたいな状態になってしまうこともある。
家でもまめに虫よけを塗るくらいしか防御のしようがないので、予防についてはそんな話だったのだけれど、 「かきこわしてしまうと、プールに入れないよ」 と言われてギクリ。そうなのだ、それが一番気になっていたのだ。大好きなプールに入れなくてはかわいそうなので、私だってなんとかしてあげたい。しつこいくらいに虫よけをやるしかないのだろう。常々悩んでいたことなので、ここでまず、ちょっと気持ちが落ち込む。
さらに。 避難訓練の話になった。 だるそうに歩こうとしないルンバの手を引いたのは、保健の先生だったらしいのだ。 「ルンバくん、とにかく歩かないですね。おうちでも自転車とかばかりじゃなくて、なるべく歩かせるようにしてください。もし公園などに行っても座ってジッとして遊ぶのが好きなら、行き帰りは歩いて行くとかしないと」 と、「ダメですねえ」のニュアンスをひしひしと感じさせるような感じでまくし立てられた。
「公園に行ったら動き回ってますし、近所なら行き帰りは歩きです。歩かせてはいると思うんですが…」 そう言っても、先生は、本当にそうか?という顔つきだ。 「避難訓練だから急がなきゃいけないし、一生懸命手を引っ張ったけど、とにかく歩かない。それに、よく転びますね。ほかの子に比べて弱いという感じがしますよ。もう少し気をつけてあげてください」 そう言われて、結局は「すみませんでした」で締めくくらざるをえなくなった。
帰途、私はものすごく落ち込んだ。一気にまくし立てられたことと、自分がいま妊娠していることから、確かに妊娠以前に比べベビーカーや自転車に頼る部分が増えてはいるという後ろめたさのためだった。
でも、そんなに歩かせていないだろうか…? ルンバはそんなに歩かないだろうか…?
確かに抱っこをねだってばかりの時もあるけれど、保育園からの帰り道、1時間以上かけて歩いて帰ったりしているじゃないか。公園に行けば隅から隅まで歩き回り、すべての遊具を征服しなきゃ気が済まない。お出かけした時だって、なんだかんだで結構歩いているはずだ。
そして、ルンバはそんなによく転ぶだろうか…?
いや、私と出かける時には、そんなに転ばない。そう考えて、そういえば「先生が手を引っ張って、急いで歩いていた」のだということを思い出した。ルンバがよく転んだのは、もしかすると、ダランとしたルンバにイライラした先生が、せかすように無理に引っ張ったからかもしれない。その場を見ていないから何とも言えないけれど、そんな気がした。
1日経って、ようやく私も落ち着いた。もちろん、ルンバをなるべく歩かせるように気を配るようにしようとは思うけれど、そう気にすることでもないという結論に達した。悩んで損した気分になってきた。最近は育児のことで何か言われて落ち込むということがすっかり減っていたけれど、やっぱり気になることを言われれば、簡単に動揺するし、落ち込む。まだまだ未熟な自分を痛感した出来事だった。
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