「隙 間」

2005年08月04日(木) 月光

風が吹いていた。
空の上では、きっともっと強く吹いているに違いなかった。
雲間から、月灯りが一瞬差したように感じた。
思わず見上げてみる。
見上げた瞬間、分厚い雲が空を覆い隠していた。
その、繰り返し……。
次は逃すまじ、と雲を見据える。
強く風が吹く。
思わず、顔を伏せる。
一瞬、頬に光が差した気がした。
まだ強い風の中、うっすらとまぶたをあげる。
空は厚い雲に覆われたまま……。
月が見えたのは、気のせいだろうか。
見たい、と願う気持ちが、まぼろしを見せていたのだろうか。
強くまぶたを閉じる、ギュッと。
まぶたの裏に、月を思い描く。
その月はまぶたを離れ、心の天頂に駆け上ってゆく。
白い光が、暖かく私を照らしている。
……心地良い。
風に吹かれた髪が頬を叩き、まぼろしの月は瞬く間に消える。
現実が頬を叩く。
体をすぼめる。
風が冷たい。
本当の月は、いつ、どこで、ここを照らしてくれるのだろう……。
雲の切れ目を探して、歩き続ける。
一歩、また一歩……。


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