改札を抜けて外に出る。夜の通り雨がアスファルトを冷ました後で、風がひんやりと足元を通り抜けてゆく。薄暗い足元で、時折、水を跳ね上げる音を立てる。気を抜いたらガクガクしそうな膝をこらえて歩く。家まであと何歩?いつもの癖で、頭上に月を探す。雲はまだ厚く、隠れたまま。水たまりに映る街灯の月を、足で踏み消して回る。はじけて、またすぐにその姿を現す。ひとつの月を踏み付けたまま、空を仰ぐ。本当の月は、まだ姿を現さない……。やがて諦めて、また家路に向かう。