「隙 間」

2005年11月05日(土) オレンジの友とグレイな自分と、白い月と

「随分、顔色が良くなったじゃない。調子はどう?」
理由がわかっているから、かれこれ一年近くの付合いだから、センセイは笑顔で話してくれた。
去年の今頃は、そう、ただただ辛さだけで一杯だった。理由はわからないけどその自分のオカシサに、不安で埋め尽くされていた。
原因がやがてわかり、でもその現実に改めて直面した実感が湧かずにいた。
そして、改めて現実に直面した時、足元にちょっと力を入れただけでガラガラと崩れてしまうような道を歩まざるを得ない現実に気付き、茫然、愕然とした。
誰であろうと、きっと本当には理解してはもらえない物を背負って行かねばならない事。それでも自分はまだ楽な方だと言う事。
普通の生活を普通に送る為にやらねばならない事、そしてその弊害を覚悟しなければならない事。
「絶対に本気で口にしない方がいいよ。本当にマズイ時以外は」
オレンジ色の東京タワーを見上げて問い掛ける。
「君の様に、僕はちゃんと二つの足で立ち続けていられるかしら?」
缶コーヒーで軽く乾杯を挙げ、残りを一気に流し込む。
甘い香りが一瞬漂い、その残り香を掻き消す様にして背中を向ける。
立てる所に立つしかないんだ……。
何を言われても。


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