白日の独白
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何とも言えない唸り声が前方から聞えたので反射的に其方を見遣る。 ヨレヨレのTシャツに黒のリュックを左肩にかけた屑男が、柄シャツを着たヤクザ崩れの屑男に凄い形相で睨むと足早に立ち去った。 ヤクザ崩れの屑男は2度程呼び掛け、舎弟と思しき屑男に追い駆けさせた。 15秒程言葉で罵りあった後は、唾をかけたり殴ったりしていた。 どうやら小競合いの原因は『肩がぶつかったから』のようであった。 急に屑舎弟は脱兎の如く逃げ、リュックの屑男が其れを追い、見ると警官がふたりを追い駆けて行った。
周りに居た人々は、足を止めてふたりの遣り取りを遠巻きに眺めていた。 その表情は『苦笑い』とか『嘲笑』或は『無表情』で、『恐怖』ではなかった。 彼等が護ろうとしているものの儚さに、何だか居た堪れなくなった。
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