白日の独白
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およそ其処には情緒が含まれていなかった。それが僕を殺人へと駆り立てた。
宅地開発中と思しき田舎道を独りで歩いていたら空に長方形の穴が開いた。 次の瞬間にはまた普通の空に戻りまた穴が開くを断続的に繰り返す。 不思議に思い歩みを止めてじっと見詰めるとそれは穴ではなく白い車であった。 車は横転したかと思うと起き上がり蛇行しながら暴走している。 道行く人を轢き殺しても一向に止まる気配はない。 あっという間に僕の直ぐ目の前までやってくる。危機一髪。絶体絶命。 僕は前へ進むべきか或いは後退するべきか判断がつかない。車は迫る。 身動き取れずに硬直し決まらない覚悟をすると急に暴走していた車が止まる。 ニタニタと吐き気がするような笑顔を貼り付けた男が車から降りてきた。 ねぇビックリした?軽い冗談だよと男は言った。 僕は頭の中で何かが切れる音を聴いた。 男に飛び蹴りをして倒れた所を馬乗りになって無茶苦茶に殴り付けた。 お前みたいな奴が生きるなんてくだらねぇ殺してやると震えた声で叫んでいた。 もしも男が僕を本気で殺すつもりだったのなら僕は甘んじて受けたと想う。 それがどのような理由であれ僕は殺意を持たれるだけのことをしたのだろうから。 けれど男は僕を殺す気なんかなかった。ちょっとした悪戯だと。 僕はそれが許せなかった。酷く侮辱されたような気がした。 相変わらず男は笑っていた。もうこれ以上笑えないように僕は男の首を絞め・・・・ そこで目が醒めた。 僕は男の息の根をきちんと止める事が出来たのかがわからないのが悔しい。
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