くじら浜
 夢使い







森の中へ    2001年10月23日(火)

そこは陽射しがまったく届かぬほどに樹々が生い茂り
その樹はあくまで高く
見上げれば天に突き刺すように真っ直ぐに伸び
でんと構えた何本もの大木がふたりを迎えた

肌に直接沁みる冷気は
細胞のひとつひとつに語りかけ
それは覚醒と同時にふたりの眠気を促がす

宇宙はたしかにここにあり
ぼくの存在は君を認め
君のぬくもりこそがぼくを認めた

敷き詰められた枯葉の上に
背からおろした毛布を一枚
ふたり一緒に包れば
互いの細胞は一瞬のうちに溶け合い
その大木の脈動につながり
その枝葉の意識につながり
その光線の調べにつながり
そのざわめきの彎曲につながり

たとえばこれが宇宙の果てならば
たとえばこれが大きな力なら
透明な透明な
森の中は
ここにある





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