大人の再開ピアノ、もどき
DiaryINDEX|past|will
相変わらず朦朧として寝てばかり。 うとうとしていたら弦を弾く音が聞こえる。 まるで筝の調弦のような、単音と単音をズラして鳴らす静かな音。 五度、三度、二度、六度、オクターブ。 微妙に音が変わる。 ああ、隣のピアノを調律してるんだろう。 お隣さんが越してきて十年ほどたつのに初めて聴いた。 静寂にゆっくりと重なる音。音楽ではない、音楽。 調弦する音を聴いていると背筋が伸びる。 眠くてだるくてたまらなかったのに、目が醒める。 そうか、条件反射ってやつだな。 いつのまにか、心が鏡面のように落ちつく。 調弦は、精神統一になってたっけ。
起き出したら隣の音は生活音に紛れてしまう。 こういう話を誰かとしたい、と思っても家族に話せない。 興味はないだろうから黙ってる。ま、そんなもんだ。 話せる相手のいる人はきっと幸福だろう。
|