2005年07月29日(金) 「KANABALIZM」 田中加奈子 |
■KANABALIZM 著・田中加奈子
ブックオフにジョジョのゲームを探しに行ったら、発見。
運命の出会いを感じて、購入。
以下、作品毎に感想。
・竜鬚虎図
他の作品と絵柄が全然違う。線が細い。
人食い虎の封じ込められた絵に描かれた女の子と、絵描きの少年の話。
派手な戦闘シーンとかは全然無いし、お色気下ネタもそれほどでも。
でも、話に引き込まれるなぁ。きっちりまとめてある。
親に対する思春期の葛藤、とかまで描かれている(深読みしすぎ)
あと、人食い虎が出る当たり、山月記みたい。
そういう文学的知識も持ち合わせていらっしゃるのでは…田中氏。
こんだけ描けていれば、速攻連載持てたのでは…と思うが、
やはり、そこは人の好みがあるのだろうな。
私は大好きだ、この人の漫画。
・洒落市
江戸時代らしき舞台背景。墓荒らしで貧しい人に金品を配る義賊が主人公。
ただ、呪いがかかっていて、墓を荒らすたびに、身体が白骨化する。
まさに骨身を削っている。
主人公・洒落市やら、雷帝・黒天狗のコスチュームが格好いい。
胎児の着物なんて、普通じゃデザインしないでしょ。さすが田中氏。
黒天狗は、雷帝=中国では閻魔という伏線が憎い。うまいなぁ。
墓に埋もれた子供を救出する為、完全白骨化するのだが、
その、骸骨が子供を抱くシーンで、背筋がゾクゾクした。
すげぇ描写だ…。こんな漫画家居ないよ…。
・クリーチャーズ
遠い未来の地球を舞台にしたSF作品。
人類は月に移住。地球は知能を持った虫たち(昆虫人間)の楽園に。
その虫退治を命ぜられた、女死刑囚と蚕蛾の昆虫人間とのラブストーリー。
とっても人情味溢れるお話でありました。
蚕蛾のウーライは、「毛深くて、マッチョで、フル○ン」な外見ですが、
いわゆる憎めないお馬鹿キャラで、ずいぶん人気有った様子。
あぁ、こりゃ人気出るよ、と素直に思ったキャラでした。
死刑囚・隗(くまる)も、男をたぶらかす悪女だが、過去が過去だけに憎めない。
最後はハッピーエンドでジーンと来る。
普通のカップルじゃなく、異色中の異色(ていうかあり得ない)ところが素敵だ。
・コタンコロカムイ
キターーーーーーーーーーー!!!!!!!
噂には聞いていたが、これ、すごい。アイヌ漫画だよ、アイヌ漫画!!
もうね、ホロホロの必殺技以上にアイヌ語が頻出。(ホロケウ=狼も出た)
きちんと下調べの元に構成されていて、すばらしい出来!キレのいい作品。
これで続編描けるよ、十分いけるよ。というのは妄信的か?
フクロウの女の子(ていうか雌)が、人のカタチを借りて、人間を守る。
反対に、人間が魔物として、人間を脅かす。
千匹の獲物を狩ると、魔物…というかその身が獣と化してしまう。
そして、元人間の獣と、人間のカタチをした獣の葛藤を描いた作品。
…うーむ。これって、ホロホロの伏線に使えそうじゃないか…?
アイヌの考えって、人間とその他の生き物ってのは対等なんだな、と思った。
あと、自然に対する考え、これがインディアンと似ている気がする。
なんにせよ、自然の厳しさを知っている民族の思想は、格好良いと思う。
少しは見習え、現代人。
消費するだけが、生きるって事じゃないんだ。
・三獣士
読み切り版。結構覚えていた。連載版の一話目と余り変わらない感じ。
以下、シャラマー様の尊い愛の定理。
人の命は儚い→強い自分に殺されれば永遠になれる→それが愛
アモーレ、とか、ラ・マン(愛しい人)とか連呼するシャラマー様。
熱いお人である…どっちかつうと、連載版の方が威厳がある。
これ、続いて欲しかったなぁ、面白い漫画だと思うよ。本当。
余談だが、悟空とジャイロ・ツェペリは同類項ではなかろうか。
総合感想。
買 っ て 損 無 し 。
この時期のジャンプって、こういう漫画載せていたのだねぇ。
仏ゾーンも連載出来たはずだ、こりゃ。
いつから形態変わって、規制が激しくなったんだろう。
ジョジョ五部の辺りからだろうか(by.荒木氏発言より)
もったいないなぁ。
規制吹っ飛ばせば、田中氏も武井氏ももっと面白いと思う。
…あと、アンケート制度が無くなればね…。
しかし、過ぎ去った事を悔やんでもしょうがない。
今のジャンプにこういう濃い漫画の掲載を求めても無理だろう。
「昔のジャンプはよかったなぁ」と懐古する為の良い材料を手に入れた、
と言っておこう。うむ。