「悪人」(吉田修一)を読みました。 衝撃で、読み終わった今、呆然としてます。今年、最も面白かった本の一つ。
女性の死体が峠で発見され、関わりのあった様々な人の視点から、事件が語られていきます。 犯人は早々に明らかになりますが、事件の経緯は、なかなか語られません。 映画「ゆれる」みたいな感じで、少しずつ、直前の状況をフラッシュバックしていきます。
「悪人」というタイトルが、誰を指すのか? 誰でも悪人であるとも言えるし、誰も悪くないとも言える。 人の弱さや、軽蔑、見栄といった負の感情を、自然に描くのがとても上手いと思いました。
寂しさの表現が、突き刺さるように心に残っています。 「寂しさとは、自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれない。これまでは誰かに伝えたい話など無かったのだ。でも、今の自分にはそれがあった。伝える誰かに出会いたかった」 「誰でもよかったわけじゃない。誰でもいいから抱き合いたかったわけじゃない。自分のことを抱きたいと思ってくれる人に、強く抱きしめてほしかった。」
寂しい二人が気持ちを通わせ合ったのも一瞬。 ラストはやるせない。こんな切ない愛情があるのか! と思いました。
まとまりの無い感想ですが、とにかく凄かったです。 寝ても覚めても、九州の風景と九州弁が頭から離れません。 実際にあった出来事を、横でずっと見ているような気持ちでした。
それにしても、佳乃のお父さんはいい人なのに、何で佳乃はあんな根性悪く育ってしまったんだろう。
悪人というには小心者だけど、増尾もかなり嫌な奴だと思いました。 ネタバレ灯台で再会するシーンは泣きたくなりました。 それもつかの間の、急展開。 結局、祐一の嘘で、光代は守れたけど、祐一はひとりぼっちになってしまったんですね…。
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