友達が髪を切った。 「さっぱりして似合ってるよ」 アイスコーヒーの氷をカラカラさせて私は言った。 多分、夕べは眠れない夜を過ごした彼女。 腫れた目をさらに細めて笑う。 「悲しみって共有出来ないから自分で乗り越えるしかないよね」 部屋がいつもより片付いていて 何かが足りないような気がした。 彼女は恋人と別れた。 「恋人と別れて髪をきるなんて、笑っちゃうけど」 「けど?」 「なんかカタチが欲しかったのかもしれない」 ふうん、とうなづいた。 別れてしまった理由はわからない。 嫌いになって別れたのではないというのが 今の彼女を見ていれば確かだった。 「今日は飲もう」 「うん」 冷蔵庫からカンビールをだして乾杯。 「昔、ビールの缶でピラミッド作ったよね」 あはは、と笑って 「今日は東京タワーにしようっか」 見慣れたはずの彼女の顔は 見慣れない笑顔だった。 耳にかかるくらいの横髪は 彼女の赤いホッペを隠した。 小さい頃の話をした。 私が先輩を好きだったこと、 マラソンがイヤで仮病したこと、 給食の牛乳が飲めなくて泣いたこと、 たくさんたくさん話をした。
ああ、私はずっと彼女をみてきた。 何年も。 「もう大丈夫だよ」 と、彼女が笑う。 「きっと大丈夫だよ」 だから私も笑う。
「それからの二人は毎日がキャンプしてるみたいで 怖いものナシね 二人 ねえ オリーブ」
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