毒茄子
レガお君



 明日はあるか?

果たして台風は来るのかね。

高校教師は台風と聞いて浮かれてる。
何度もしつこく天気予報を見る。
もしかしたら奴の生徒並みに
台風休みを喜んでるかもしれない。
奴の目論見は「とりあえず出勤して
警報が出て子どもは休み。
だからそのまま残ってる仕事をして
昼ごろに台風が行ってしまって
自分の仕事も目処がついて
昼からは台風一過の街に遊びに出る」
都合良すぎ。

私はどっちみち出勤だけど
明日は実習中の学生の
初期アセスメントを貰わないと困る。
月曜に提出して一度見ておかないと
そのまま臨床に出せるほどの
完成度が備わってるとは思えない。
受け持ち7人中2人は特に怪しい。

昨日はかなり久しぶりに母親と出かける。
母親の服を見繕えと言われて喧嘩し
他にも何かにつけて色々と
小競り合いを繰り返しながらの道中。
本当に見事にそりが合わず
何をしても何を言われても気に食わない。
世の中にはこんな母娘もいる。
20万円以上する
鍋のセットを買ってもらいながら
口から出るのは悪態ばかり。
母親も負けていないし。

メインの用事は
叔母にあたる人が主催する
ダンススクールの発表会。
その叔母は大腸がんの術後で
遠隔転移もある。
抗がん剤を続けながらの生活で
それでもダンススクールを続けてる。
で、おそらく今回の発表会が
最後になりそうだという事で見に行く。

抗がん剤のダメージで
3日前まではほとんど
動けなかったらしい。
それでも代表として
気丈にステージを務め
古い仲間も駆けつけてという
記念の催しだった。

さすがに身体のキレは悪いらしく
動きが周りと合わない事もあった。
練習なんて多分出来てない中でも
ピンと伸びた背筋が印象的で
気迫は伝わってくる。
ダンスはよく解らないけど
叔母のすごさは良くわかった。

若い頃にダンス留学をして
その時に一緒に頑張った仲間も
遠くから駆けつけて
一緒にステージに立ってた。
叔母も然ることながら
仲間たちはどういう思いで
一緒にステージに立ってたんだろう。

普段は交流がない人なので
叔母を自分の身内と言う視点と
ひとりのがん患者という視点と
両方で見られる。
私たちは普段、入院中の患者しか知らない。
だから病院から離れて
自分らしく生きる事を必死で求める人と
その人を支える家族や友人を見て
色々と感じるところは多かった。

30歳代前半で胃がんを患い
亡くなる2週間前まで病棟に身を置き
現役ナースとして亡くなった先輩や
今まで看取った患者さんを思う。
先週亡くなった友達の子どもや
新婚1年で体調を崩してて
婦人科系がんの疑いが濃い先輩もいる。
誰の明日も確かじゃない。

それでも頑張らなきゃ。

2004年06月20日(日)
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