二度とない瞬間。


眠れなかった。
朝方、少しウトウトして、起きたのは6時30分。
思った通りの、情緒不安定。
もう、あたしには時間がないんだ。

まだ少し熱っぽい体を引きずって出かけた。
友達も風邪ひいてて。
だいぶ無理させちゃったな。
いっつも甘えちゃってごめんね、ありがとう。

あの人と会うのが、こんなに嫌だと思った事なんてなかった。
今日とゆう日が来なきゃいいって、思ってた。
けど、そんな事あるはずなくて。

ひさしぶりに見た彼は、雰囲気が少し変わってて。
少しだけ、前に戻ったみたい。
あたしが出逢った頃みたい。
最近ではめずらしく、だるそーにしてると思ったら、、、
何だか風邪、ひいてたみたいで。
あんまりタイミングいいから、おかしくて笑った。

今日、左手になかった。
ここ最近はずっとしてたのに。
あたしのせいかな?
なんて、そんなのはただのうぬぼれだね。
だけど、、、
ごめんね、もう、気にしなくていいよ。
今はちゃんと解ってるから。


立ち上がると、もう足が、体中が、震えてた。
今にも泣き出しそうだった。

最後のあなたとの瞬間、何も覚えてません。
あなたが何を言ったのかも、あたしが何を言ったのかも。
ただ、今も瞼に焼き付いて離れないのは、あなたの顔。
黒くて大きい瞳。

ホントはね、手、離したくなかった。

少しでも、気付いてくれた?
あたしだって、気付いてくれた?
あの瞬間のあなたの顔、忘れられない。
少し目を見開いたように驚いて、
あたしに何か言ったよね。それから。


「頑張る、頑張るから」


覚えてるのは、ただそれだけ。
あたし、あなたに何も言えなかった。
ただ、何度も頷いて。
涙を堪えるのが精一杯だった。

ずっと、触れてたかったよ、いつまでも。


彼の手が離れた瞬間、視線を逸らした。
もう、我慢できなかった。
ただ、ただ下を向いて、少しでも遠くへ行きたかった。

泣きながら、歩いて、歩いて、歩いて。
街の人の目も気にならなかった。


もう、あたしが彼に触れる事は一生ない。
あなたの瞳に映る事さえ出来ない。

哀しい。
寂しい。
苦しい。

ホントはまだ、好きだよ。
過去形にできるほど、薄れてない。
好きだよ。
大好き。
だから、好きだから、終わり。
まだ好きだから、ちゃんと終わりにしなくちゃ。

あたしのために。
彼のために。


進み続ける時間。
何があったって、止まる事なんてないね。
だけど今だけは、少しでいい、時間が止まればいいのに。

明日で最後。
そんなの無理だよ。
想い切れるわけなんてない。
やだよ、やだ。
忘れたくない。
ずっとずっとずっと、好きでいたい。
叶わなくてもいいから、見つめ続けたい。

ごめんね、あたしはやっぱりワガママみたい。
自分勝手な事ばっかり言って、、、
ごめんね。ごめんね。
でもこのワガママも、あと一日だけ。


『この日まで、    の事好きでいさせて。
 あと、1日だけ。
 そしたらもう、ちゃんと想い切るから。』


約束、守ってみせるよ。
最後の日、楽しみにしてるから。
あなたも約束通り、大切な日にして。

あなたに恋したのはあそこで、
想い切るのも同じ場所なんて、何だか皮肉だね。


2003年05月04日(日)

魔法がとけるまで。 / ちぃ。

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