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2002年11月24日(日) |
開封後は賞味期限にかかわらずお早めにお召し上がりください |
重症。 頭の中がいっぱいになる。 彼のことで。 頭がいっぱいになる。 彼と同じような背格好の人を見かけるだけで、こころの中で変な音がきこえる。
でもまだ足りないと。 どうしても何かが足りないと、こころの上げる声は悲鳴に近くなってきていて。
もう狂ってしまいそうだった。
「あれー、飲まないのー? 」 友達に誘われてやってきた飲み会。 彼の学校の飲み会。 ちっとも楽しくない。 なんでだろう。 飲み会嫌いのはずの私が楽しめる集まりのはずなのに。 みんな、いつものように盛り上がっているのに。
なんでだろう。
「ゴメンね、ノリが悪くて」 「んー。突然誘ったのも悪かったし。今日はあんまり知り合いもいないでしょ。いつものみんなも誘ったんだけど最近は忙しいらしくてねー」
なんでだろう。 友達のことばもうわのそらで、考えていたら、ふと。
”いつものみんなもさそったんだけど”という文字列が耳に残っていることに気付く。
そして、それに伴って、唐突に頭に浮かんだ事実がひとつ。
彼がいないからつまらないんじゃないか。
…嘘。 そんなはずはない。
と思ったけど、一度思ってしまうとなかなか訂正というのは難しいもので。
「ゴメン、あたし、今日帰るね」 と、吐き出すように言っていた。 「あ、本当に? わかった、気をつけてね」 友達はそれ以上詮索せず、立ち上がる私に向かって手を振った。
帰る道すがら一人で考えるとますます、さっきの考えを否定できなくなってくる。本来飲み会が嫌いで、盛り上がりに欠ける私の隣で色々話をしていたのは。 いつも話をしていたのは、彼だったような気がする。
彼だったような気がする。
そう思ったらまたこころの中で変な音がして、私は頭を抱えた。 だったらなんだっていうの。 だからどうしようっていうわけ。
と、問い掛けてみても自分が理解不能で、すべてを放棄して眠ってしまおう、と開き直ったところで、携帯が短く鳴った。 めんどくさいなぁ、と思いながらも一応確認してみると、メールだった。
>最近会ってないけど元気ー? という、彼からのメールだった。
瞬間。 頭の中が真っ白になった。
そういえば、彼からメールが来たのはいつが最後だっただろう。 彼と電話で話したのはいつが最後だっただろう。 彼に会ったのはいつが最後だっただろう。 いつが。 いつが最後だっただろう。
…ああ、そうか。
足りなかったのは、『彼』か。
なんだかバカみたいだ。 そう思って返信ボタンを押しかけて、やっぱりやめる。 そして電話帳を開いて、電話をかける。
「ちょっと、久し振りのメールが『元気?』だけってどういうこと」
『あれ。電話珍しいね』
「眠いんだもん、返事打つのが面倒なんだよ」
『はは、めんどくさがりだなー』
「うっさい」
『すいませんね。うっさくて。ちょっと元気かなーって思ったから。元気?』
「元気じゃない」
『え』
「病気になった」
『は』
「あんたのせいで病気になった」
『な、え、なんで、何の病気??』
ふふふ、うろたえてやがる。 面白いなぁ。 こんなところがいいのか。 いいのかもしれないな。
「さて、何の病気でしょうか」
『えー、ちょっともったいぶらないで教えてよー』
「恋の病だバカやろー」
ぷち。
自分で言ってて照れたので勢いよく通話終了ボタンを押す。 恋の病って何だよ、時代遅れもいいとこだよ。 と思ったけれど、気付いてしまえば何ともあっさりした気分になってしまった。
賞味期限直前に、開封してしまった私の気持ち。 彼のことを、好きだという気持ち。 開封してよかったのか、いまだに不安は残るけど、開けてしまったからには仕方ない。 おいしくてもまずくても、最後までしっかり頂きましょう。 この気持ちを残さずに。
そのまま眠ってしまって次の日の昼まで気付かなかったメールには、
>俺で治せそうだったらいつでも呼んで
と、書かれていたのだけど、それを知るのはまだ何時間も先の話。
おわり
……祝!完結ー!!!(と思っているのはもしや私だけでは…)
終わりましたー!終わらせましたー! 一回書いたやつが消えてしまった後遺症からかすっかり書けなくなってしまって20日ぶりの最終回です。そんなわけでないようもやや最初に思っていたものと変わってしまったのですが。まぁこれはこれでけっこういいかななんて…。(え)
知らぬ間に気付けば誕生日まであと一ヶ月です。 クリスマスのイルミネーションがオレを苛むんだ…。(浸ってる) あああー。今年もこのまま敗れ去るのか我ー!!
…かなしひ。
とりあえず賞味期限含めここに書いた短編さんたちはどこかに収納しようと思います。…時間があるときに(泣) 今日はちょっと長かったッスね、まあたまにはこんなこともあります。 空白で時間とか表現してしまってるし(爆)
ともかく、大変、大変お待たせしてしまって申し訳ありませんでした!
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