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 少し,思い出してみようと思った。  
 2002年02月25日(月)
 
何年前のことだったかも分からないけど,
そろそろメリーの命日だったと思う。
メリーって言うのは昔飼ってた犬で,
記憶に残ってるのは,おばあちゃん犬だったこと。
若いころの記憶は無い。
茶色い毛に緑の首輪,くるっと巻いた尻尾。
大人しくて,賢かった。

ある日,犬小屋を新しいのに変えて,
古い小屋を燃やしてたら
それを見て逃げ出して,自分の子供が居る家まで行っていたり。
心配だったのか何なのか・・・。

でも,病気になった。
手術するにもおばあちゃん犬だったから,持たないだろうって。
すごく苦しそう。血を吐いてた。
いつも口のまわりは血だらけで,毛も吐いた血で汚れてた。
起き上がる力が無くなって,腹ばいになったままでも
家族が小屋の前に行くと尻尾を振って顔を上げる。
痛々しかった。頭を持ち上げるのすら辛そうなのに。
体を撫でたら,血と汗が付いた。
こっちを見ている。口から血を吐きながらも,
目だけはキラキラしてる。
立つ事はできなくても,精一杯の喜びを表現してた。

数週間後,小学校から帰ったわたしは,
メリーが居た犬小屋が燃えてるのを見た。

もう,埋めてしまった後だった。

祖父の話を聞いた。
祖父がメリーの様子を見に小屋へ行き,名を呼んだ。
そうしたらメリーは嬉しそうに尻尾を振って
顔を上げて
祖父の顔を見つめて
それからコトリと死んだのだそうだ。

良かったのかな。良かったのかも。
誰にも看取られずに死ぬんじゃなくて,
大好きな祖父に看取られたんだから。


わたしにとって,はじめての身近なものの死だった。
その日は一日中泣いた。
これ以上悲しいことなんて無いんじゃないかとも思った。

あれから何年経ったのか,
今,わたしは『一番悲しかったのは何か』と思う。
それで,比べる事はできないんじゃないかと思う。
Kの死のことが,メリーの死よりも悲しいとも言い切れない。
どれが一番とか,そんなことなんて考える余裕も無い。
ただ,悲しい。
酷い喪失感。
こんな悲しい思いなんてしたくない。
だけど,誰もが通る道。
壊れそうなくらい 辛くて苦しいことを乗り越えたら
心が強くなる日は来るんだろうか。
それは,麻痺ではなく。

Kのこともいつか書こうと思う。
自分の気持ちの整理のために。
ただ,今はまだどこから書いてよいのかすら分からない。

多分,もうすぐメリーの命日。
そんな大切な日を どうしてわたしは忘れているんだろう。


 


 

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