「 最後の曲でお願いしたいのですが …
安い席に座っている人たちは、手をたたいてください。
あとの方々は、宝石類をジャラジャラ鳴らしてください 」
ジョン・レノン ( イギリスのミュージシャン )
For the last number I'd like to ask your help … for the people in the cheaper seats, clap your hands, and for the rest of you to rattle your jewellery.
John Lennon
1963年、英国王室御前演奏会のステージ上に、ビートルズは居た。
冒頭の句は、彼らの音楽に興味なさそうな王室関係者をからかったMC。
ここ数十年、私は 『 紅白歌合戦 』 なるテレビ番組を観ていないので、昨年の大晦日に、誰が出て、何を歌っていたのか知らないし、興味も無い。
ただ、ここ数年は視聴率が低迷していることや、昨年は 「 DJ OZMA 」 のバックダンサーによる衣装が問題になったことは、報道により知っている。
どうやら、裸にみえる 「 乳房などが描かれたボディスーツ 」 に衣装替えした女性ダンサーが1分以上踊って、視聴者からの苦情が相次いだらしい。
苦情の内容に多かった 「 これが NHK の品格か 」 という意見を具体例に挙げ、NHK 会長は4日、職員に向けた年頭の挨拶で謝罪したという。
文化相も5日、「 品性をもった人間が動かしていけば、そういうことは起こらない 」 と不快感を露にし、NHK への自粛を促したようである。
この問題に関しては、どうにも腑に落ちない点が多い。
まず一つ目は、なぜ NHK が 「 ハプニング防止策 」 をとっていなかったのかという点と、それに対する説明が一切ない部分だ。
ご記憶の方も多いと思うが、2004年2月に生中継されたスーパーボウルのハーフタイムショーで、歌手のジャネット・ジャクソンが片胸を露出した。
当初はハプニングを装っていたが、意図的な演出であったことが判明して、生中継を流したテレビ局は、高額の罰金処分を受けることになった。
それ以来、世界中の大手メディアは 「 生中継を数秒間、遅らせる 」 という措置をとるようになり、不測の事態や放送事故に対処してきている。
第二の疑問点は、OZMA氏側が事前に 「 やるよ 」 と予告していたことや、彼自身のツアーで同じパフォーマンスを見せていた事実にある。
NHK は 「 放送まで知らなかった 」 とコメントしているが、彼の出演が決定してからずっと話題になっていた世間の関心事であり、素直には信じ難い。
断定はできないが、視聴率獲得のため 「 ある程度のハプニング 」 は予測し、あるいは期待したうえで、彼を登用したと考えるほうが自然だろう。
第三の疑問点は、猥褻物を開陳したわけでもないのに、苦情が多かったら不祥事という結論に達してしまうのか、その曖昧な基準である。
紅白では 「 観るに耐えないギャグ 」 が曲の間に展開されるけれど、それを不快と思う私のような人間が苦情を多く寄せると、不祥事になり得るのか。
結論的に言うと、この一件には 「 加害者 」 など存在せず、パフォーマーはもとより、NHK の職員の誰一人として、何の責任もないと思う。
国民放送といえども歌番組なんてものは 「 娯楽番組 」 なのであり、そこに教育的見地とか、高度な品格など求めることに無理がある。
品格を語るなら、ロックやポップスにおける歌詞の大部分に問題はあるし、大御所と呼ばれる有名歌手による演歌も例外ではない。
荒波の寄せる日本海に古い船で漁に出ると、海上保安庁の視点からみて 「 模範的な品格 」 には程遠い話で、誰かが真似したら海難事故に繋がる。
不倫中の女性が冬の旅館に泊まり、「 着てはもらえぬセーター 」 なんかを寒さこらえて編んでいる光景も、教育上よろしくない話である。
問題は、「 誰に向けて、喜んでもらう番組を流すか 」 という一点であって、スポーツのようなノンフィクションは別として、万人を喜ばすのは不可能だ。
たとえば私は演歌が苦手なので、サブちゃんや氷川きよしクンが出ているかぎり、そんな番組を満足して眺めることは考えられない。
善い悪いではなく、それは 「 趣味 」 の問題であって、低俗か高尚かなんて基準と同様に、人それぞれの価値観に委ねられるものだろう。
結局、「 観たくない奴は観るな 」 という次元の話で、DJ OZMA の表現する世界観を理解せず、衣装にだけケチをつける視聴者側に問題がある。
音楽とは 「 音を楽しむ 」 ものであって、楽しきゃ観ればいいし、楽しめなければ観ないという選択は、NHK といえども視聴者の責任なのだ。
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