Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2007年06月05日(火) 脱北者の生命力



「 今やるべきことが僕には分かる。

  生き続けなければならない 」

                        映画 『 キャスト・アウェイ 』 より

I know what I have to do now. I've got to keep breathing.

                                   Cast Away



飛行機が墜落し、ただ一人、地図にもない無人島に漂着してしまう。

トム・ハンクス 演じる主人公は、そこから凄絶な試練を体験する。


無人島に着いた彼が、最初に思い知るのは、水、食糧、明かり、火などの 「 生活上の必須アイテム 」 を得ることが、なんと難しいかということである。

日頃、当然のように享受している文明から切り離され、風、波、雨、太陽、闇が支配する自然の中に、裸同然で放り出されたら人間はどうなるか。

敵は自然の脅威だけでなく、有り余る時間と絶望の中で心を通わせるものが何もない 「 孤独 」 に耐えなければ、そこで生き残ることはできない。

主人公は、怪我や、病気や、自殺への誘惑と闘いながら、4年後、たまたま流れ着いた簡易トイレの壁を筏の帆にして、奇跡の脱出に成功する。

生きてこそ、絶望の中に希望を見出すことも可能であり、たとえ何があっても生き続けることこそが、幸運に巡り会う機会を生み出すのである。


青森で保護された 「 脱北者 」 の一行は、北朝鮮当局の目を避けるため、一寸先も見えない濃霧の夜に、小型の舟で出航したという。

粗末とはいえど、彼らの舟には “ 北朝鮮では珍しい ” エンジン が装備されており、けして最下層とは思えない境遇の一家である。

北朝鮮で徹底した反日教育が施されているにも関わらず、最初から日本を目指していたという点でも、国際情勢を知る立場にあった可能性がある。

その彼らが、「 2日に一度しかパンが食べられなかった 」 というのだから、現地の食糧事情は、およそ我々の想像以上に逼迫しているらしい。

所持品には、食糧や毒薬 ( 自殺用 ) の他に、覚せい剤があったことから 「 工作員説 」 も否定できないが、それでも彼らは自決せず生を選んだ。


悪天候を承知で出発したが、最初の4日間は海が荒れて、食事はおろか、眠ることも、会話さえもできなかったらしい。

外交問題はともかく、特殊訓練を受けた屈強な若者ですら困難な航海を、老人や女性を含む彼らが、よくぞ生き延びて辿り着いたものだと感心する。

彼らが保護された青森の漁港関係者は、一様に 「 奇跡だ 」 と驚いているが、その奇跡を呼んだのは、彼ら自身の強い生存本能にほかならない。

命を懸けて辿り着いた 「 この国 」 に、寝食に不自由なく、人並みの仕事が出来ない程度の理由で自殺する人間が多いのは、なんとも皮肉な話だ。

贅沢に慣れすぎたせいか、少しでも自分の思い通りにならなければ、すぐに絶望してしまう風潮は、いずれ民族全体の脆弱さとなってしまうことだろう。


友人に、車椅子で30年間生活している人物がいるけれど、彼は常に働きたいという意志があり、雇用に恵まれないときはボランティアをしている。

かたや、身体的に何の不自由もない御仁が、「 汗をかくから嫌だ 」 という理由で、会社に行きたくない、仕事が嫌いだと愚痴ばかり吐いている。

そのあたりは、境遇の差というより 「 情熱の違い 」 であって、どんな恵まれた環境にあっても、情熱のない人は何も出来ないのである。

最近の精神科医は、そういう人たちを簡単に 「 鬱病 」 の一言で片付け、社会も受け入れるようになってきたが、はたしてそれでよいのだろうか。

いざという時、つまり、「 病気だからといって、誰も助けてくれない 」 状況に追い込まれたとき、彼らを無力化させた責任を誰がとるのだろうか。






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