「 憎しみが混じる愛は、愛より強く、ただの憎しみよりも強い 」
ジョイス・C・オーツ ( アメリカの作家 )
Love commingled with hate is more powerful than love. Or hate.
Joyce C. Oates
会話の途中で、「 芸能人なら、誰が好き? 」 なんて尋ねる女性がいる。
そんなときは、とりあえず 「 芸能人は嫌いです 」 と答えるようにしている。
芸能人というのも一つの職業であり、成功している人もいれば、そうは言えない人もいて、一口に 「 芸能人 」 といっても、千差万別である。
たとえば、いま私が一緒に仕事をしているモデルさんも、TVドラマで端役をもらったことがあるらしく、ある意味 「 芸能人 」 を名乗っても問題ない。
モデルさんが必要なときは、いつもそうしているのだが、中堅プロダクションのカタログをめくって、白黒写真と職歴をみて何人かに絞る。
依頼の内容を伝えた後、都合の悪い人がいれば代打要員をプロダクションが揃え、後日、クライアントを交えてオーデションみたいなことをする。
たとえば 「 ○十億円 」 の予算を投じた CM でもつくるのなら話は別だが、そんなのは大手広告代理店の仕事で、普通は無名のモデルさんを使う。
既に露出が多かったり、知名度の高い人を使うと、たしかに インパクト はあるのだが、別の企業や製品を想起する 「 先入観 」 が邪魔になる。
拘束時間も融通が利かないし、費用も掛かるし、相手のイメージ戦略やらと合致しなければ断られるし、よほどのことがないと メリット が少ない。
その点、ほとんど素人に近い無名の人は使いやすいが、「 あたりはずれ 」 が大きく、一応のオーデションをしても、目も当てられない人が来たりする。
今回は、若年層を対象とした婦人アパレルのクライアントで、ポスターとか包装資材に使うヴィジュアルに、若い女性のモデルさんを必要とした。
私のような オジサン には、どなたも 「 似たり寄ったり 」 にしか判別できない層なので、選別はクライアントのデザイナーさんに丸投げである。
案の定、私が 「 可愛いかな 」 と思っていた人は落ち、「 へぇっ? 」 と首を傾げる人が選ばれたが、「 製品が似合う 」 ことが選考基準だった。
時間も予算もないので、サクサクっと一日で撮って終了し、「 打ち上げ 」 というほどでもないが、慰労を兼ねて数人で食事に行った。
あまり立ち入った話はしなかったが、月収はそこいらのバイトより少なめで、将来的に発展する見込みもないし、長く続ける気はないのだという。
そのうえ、こんな 「 誰も知らない 」 地味なモデルさんでも、屋外撮影の場合は尾行されたり、撮影後、自宅まで付きまとわれることもあるらしい。
ビールの勢いか、これじゃぁ 「 キャバクラにでも勤めたほうがマシ 」 なんて愚痴まで飛び出し、周囲が赤面しながら諌める場面もあった。
昨日、大相撲秋場所11日目の両国国技館では、大量のビラを抱え持った中年女性が、警備員の制止を振り切って土俵に上がろうとしたらしい。
審判 錦戸親方 ( 元関脇 水戸泉 )、出番を待つ 高見盛 らが取り押さえ、引きずりおろし、以後の取組は行われたが、とんだ ハプニング である。
大量のビラを持っていたことで、相撲に関する何らかの抗議行動と思われたが、よくビラを見ると、まるで相撲には無関係な内容だったという。
一部の報道によると、そこには 「 福山 雅治 = 悪霊に取り憑かれている 」 との意味不明な文章が書かれていたそうで、どうみても常軌を逸している。
日本相撲協会としては 「 刑事事件にするつもりはない 」 ようで、大事には至らないだろうが、過去に例をみない 「 前代未聞 」 の珍事であった。
最も新しい精神医学の診断基準によると、人格障害者は三つの 「 群 」 と、十の 「 タイプ 」 に分類され、すべては、その枠内に収まるらしい。
群の一つに 「 オッドタイプ ( 風変わりなタイプ ) 」 と呼ばれるものがあり、非現実的な思考に囚われやすいグループを形成している。
この群は、妄想的人格障害、統合失調症型人格障害 ( スキゾタイパル )、統合失調質人格障害 ( シゾイド ) の3タイプが属する。
統合失調症に近縁性を持ち、自我の安全感が脅かされやすい傾向を持つが、本人に適した環境では、高い適応性や生産性を示すことも少なくない。
ただし、基本的な安心感に乏しく、自我が侵害されやすいために、合わない環境で適応不全を起こすと、精神病状態に移行することもある。
この非現実思考型 「 オッドタイプ 」 が、好みの芸能人などに憧れを抱き、いわゆる 「 追っかけ 」 などの深みにハマると、妄想が膨らみやすい。
おそらく、前述の 「 土俵乱入女性 」 などはこのタイプで、福山 氏 のファンだったのが、何らかの理由で、期待を裏切られたのではないかと思う。
たとえば、「 彼女が抱く 福山 氏 の印象 」 と違う発言を耳にしたり、印象に合わない役柄を演じたりされると、このタイプは戸惑う可能性が高い。
もちろん、「 裏切られた 」 などというのも妄想に過ぎず、福山 氏 には何の落ち度もないのだが、そのあたりを現実的に理解する機能が乏しいのだ。
夜道で斬りつけられたりしなかっただけ マシ だが、顔が売れると、この手の危険も伴うわけで、芸能人というのも楽な商売ではない。
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