2008年05月23日(金) |
平均寿命世界一の日本人が 「 老人は死ねと言うのか! 」 と怒る摩訶不思議な現象について |
「 ある年齢になると、一部の人々の頭は似てくる。
知的な蓄えを食いつぶして生きるのだ 」
ウィリアム・ライアン・フェルプス ( アメリカ人教育者、作家 )
At a certain age some people's minds close up ; they live on their intellectual fat.
William Lyon Phelps
昨年の一時期は歯科に通ったが、まず滅多に病院へ行くことはない。
健康診断も専業のクリニックで受けるから、普通の病院には行かない。
病院に行かない最大の理由は、「 健康だから 」 ということになるのだが、実際には、数年に一度ぐらい、熱が出たりして、体調を崩すこともある。
そんなときも、市販の薬を買って飲むとか、普段より仕事を早めに切り上げて寝るとかすれば、およそ次の日には元気になっているものだ。
生前には、あまり親孝行もできなかったが、いまでは、丈夫な身体に産み、健全な精神に育ててくれた両親に感謝している。
学生の頃、怪我で入院したり、長く通院したことはあったが、病気と呼べる病気にはまるで縁が無く、それで仕事を休んだ経験もない。
さすがに40代後半ともなれば、あちこちに 「 ガタ 」 がきてる事実は否めないけれど、それも 「 病気 」 という類の代物ではないようだ。
薬局に行くぐらいなら、病院に行ったほうがよいと助言される方もいるが、病院に行かない “ もう一つの理由 ” は 「 待たされるのが嫌 」 なことだ。
10年ほど前の話だが、風邪をこじらせ、珍しく病院に行ってみたら、大勢の患者が列をなしており、その繁盛ぶりを見た途端、嫌になって帰った。
行列の大部分は、どんな病気なのか知らないが、見るからに 「 健康そう 」 な老人たちで、常連の顔見知りなのか、患者同士で世間話をしている。
苦しそうにグッタリした学生や、何度も時計を気にする若者たちを尻目に、血色の良さそうな老人連中の笑い声が、ずっと待合室に響いていた。
そこで私は、頻繁に病院へ来る人々と、そうでない人々の違いが、「 病状の深刻さ 」 ではなく、「 余暇の大小 」 であることに気付いたのである。
特に私のような 「 寝てれば治るタイプの患者 」 が病院に行かない理由は、概ね、多忙で 「 病院で待つ時間がもったいない 」 と感じているからだ。
それに対し、老人たちは 「 時間を持て余している 」 わけで、余暇を過ごす場所として、映画館や喫茶店よりも、病院のほうが安上がりになる。
もちろん、どこにも悪いところが無ければ、通院する理由もないわけだが、相応の年輩になれば、多少の不具合を探すと、誰にでも見当たるだろう。
古典的なジョークに、病院の待合室で 「 今日は○○さんが来てないけど、病気なのだろうか 」 という小咄もあるが、まさにそんなところだ。
病院は、「 病気を治す施設 」 であって、「 老人たちの憩いの場 」 ではないはずだが、老人にとって 「 タダ同然の治療費 」 が、定義を変えている。
お金と時間に余裕のある老人たちが、娯楽場の如く病院へ集い、多忙で、経済的にもゆとりの無い若者たちが、苦悶しながら列の後方で待つ。
暇な老人たちにとって病院は、日常の遊技場かもしれないが、忙しい若者たちが来る理由は、「 よほど深刻な事態 」 を抱えている可能性が高い。
民主党などの野党4党は、老人たちに不評な 『 後期高齢者医療制度 』 を廃止し、旧来の老人保健制度に戻す法案を参院に共同提出した。
病院と同じく、選挙も 「 暇な人ほど参加しやすい 」 性質を持つので、老人たちの喜ぶ政策を唱えることは、選挙戦を有利に運ぶ材料となる。
問題は、「 老人の負担を減らすことで、誰の負担を増やすのか? 」 という部分にあるのだが、それを明言する政治家は、彼らの中に存在しない。
テレビ、ラジオもまた、「 暇な人ほど視聴しやすい 」 ので、老人のご機嫌を損ねないように、あからさまな 「 人気取り 」 に奔走している。
街頭インタビューでは、『 後期高齢者医療制度 』 で負担が増え、愚痴りたくて仕方がない老人を探し出し、ここぞとばかりにマイクを向ける。
すると、待ってましたとばかりに 「 老人は死ねと言うのか! 」 なんて過激な発言が飛び出し、スタジオでは、それを眺める司会者が喜色満面である。
年功序列のため、必死で働いても給料の安い若者たちにマイクを向けて、優雅な老人の負担を減らし、「 若者が負担する 」 ことの感想は尋ねない。
悠々自適に過ごす老人の待遇を改善し、結婚、出産など出費の多い若者の負担を 「 さらに増やす 」 ことの問題点は、誰も伝えないのである。
シェラレオネ という国について、ご存知の方は少ないと思うが、この国は 「 平均寿命が 34.2歳 」 で、世界ワースト1位として知られている。
男女とも平均寿命 「 世界1位 」 である日本の老人が、少しばかり医療費が上がったからといって、「 老人は死ねと言うのか! 」 と喚くのはどうか。
むしろ、日本では若者が 「 若い奴は “ 喰い物にしろ ” と言うのか! 」 と叫ぶほうが、的を得ているように思う。
選挙の票集めを目的に、老人のご機嫌ばかり窺う体質が、後の世代への 「 大きなツケ 」 を遺していることに、少しは注目したほうがよい。
地球環境、資源エネルギー問題について、「 未来ある若者たちのために 」 なんてスローガンを語る前に、世の老人たちは、そこを反省すべきだろう。
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