暗行記...不夜

 

 

【 鬼の跫 】〜book 5〜 - 2002年05月23日(木)

確かに聞こえた、その男には
少しずつ、でも確かに近づく跫が

妻が浮気をしている
それが始まりだった

浮気をした妻を撃ち殺した
相手の男の足を吹き飛ばした

男は刑務所で静かに暮らそうとした
でも跫が止まらなかった、あの鬼の跫が

最後に残された光があった
跫を止められるはずの唯一のもの

最愛の娘が親の過ちを嘆き、死んでいった

跫が止んだ、男は気付いた
自分自身が鬼と化したことを

鬼は呪いを振り撒きながらあの男を追う
妻を弄び、娘を死に追いやり、のうのうと生きる男を

呪いは周囲にも伝染していく
多くの鬼が生まれ殺戮を繰り返していく

・・・・・・・・・・・

誰もが心に鬼を住まわせている
誰もがあの跫を聞いているんだ

でも鬼の跫が近づくことは無い
そして鬼に化身することも無い

大切な人が守ってくれるから
自分よりも大切なものがあるから

人は孤独では生きていくことは出来ない
鬼になり、怒りや呪いを身に纏わなければ




 ↑西村寿行よ

  My追加  



...



 

 

 

 

暗行記 目次
軌跡   岐路

手紙  掲示板
 寂しがりやな豚ちゃんたちの旅跡