2018年03月23日(金) |
君が夏を走らせる 瀬尾まいこ |
瀬尾まいこ 新潮社 2017
STORY: 高校に入ったものの人生を諦めかかっている太田は、先輩に2歳になる直前の鈴香の面倒を見てくれと頼まれる。奥さんが切迫早産で入院しなくてはならなくなり、他に頼める人がいないのだという。太田は仕方なく引き受けることにするが…。
感想: 小学生から煙草を吸い、不良のレッテルを貼られた太田。中学時代に無理やり駅伝に出場させられ、入賞したことから、高校では真面目にやろうと思っていたが、入学した高校の環境が悪く、思うようには行かずに、16歳ながら諦めきった毎日を送っていた。
そんなときに、先輩から頼まれた子守のバイト。最初は無理だと思ったが、先輩と奥さんからの必死の頼みに断れなくなり、しぶしぶ引き受ける。
翌日、鈴香は太田のことを受け入れるわけがなく、泣き続け、そんな状態がしばらく続くが、次第に受け入れてもらえるようになり、太田は鈴香のために様々なことを工夫するようになる。
そして、ついには公園に行き、他のママ友さんたちとも仲良くなったり、鈴香を通して世界が広がっていくのであった。
が、バイトは奥さんの帰宅までの間の1ヶ月ほど。太田は次第に鈴香と離れがたくなり…。
ものすごい久しぶりの瀬尾まいこの作品。もともと好きだったけれど、この作品もとてもよかった。
16歳で世の中を諦めている太田だけれど、幼児に接するうちに自分にも小さくて可能性に満ち溢れていた時があったことや、まだ自分は若くて世界が広がっていることに気づいていく。
太田は不良で世間からは「ワル」のレッテルを貼られる見かけをしているけれど、鈴香のために料理を作ったり、遊んだり、世話をしたり…。本当に冷たくて悪い人なら絶対にできないことを普通にやっていく。
そして、別れが来る。太田はもう鈴香には会わないと思うけれど、先輩に家に気軽に遊びに行ってもいいのになーとは思った。
自分が子育てをしているからか、一番違和感があったのは、やっぱり公園のシーンかな。場所柄とかもあるんだろうけれど、ママ友さんたちが太田のことを普通に受け入れてくれる。そんな場所ばかりではないと思うんだよね。このママさんたちがいい人たちだったという感じなんじゃないかな。
まあ、そういう細かいところはよく書きすぎかなとは思ったけれど、感動的な作品に仕上がっていることには間違いなく、特に中高生ぐらいの人が読むといいのかもねと思った。
どうも中学時代の駅伝の話は「あと少し、もう少し」という作品に描かれているみたい。これも読みたいと思っていたんだけど、そのままになってしまっている作品。今度読んでみようかな。
と思ったら、すでに読んだことがあったみたい!! うわー。全然覚えてなかったよ…。
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