きよこの日記

2002年10月09日(水) みーこの物語

あたいはみーこ。
これでも昔は器量良しでならした、ちょっとした三毛猫だったのよ。
だけど、女なんて年を取るもんじゃないね。
なーんにもいいことなくってやんなっちゃうさ。

あたいにだって人なみの幸せを夢見たことがあったわ。
かっこいいオス猫とであって、かわいい小猫を産むの。
そして、優しい人間に飼われて、縁側で昼寝して暮らすの。
餌をねだるときだけ「にゃーん」って、それはそれはかわいい声で鳴いてやるわ。

いいでしょう?
猫なんだもの。

どうして、こうなっちゃったのかねえ。

私のかわいい小猫ちゃん、ちいさくってふわふわしてて、そりゃあ食べちゃいたいくらいかわいかったのよ。
人間がかわいがるのもごもっともさ。
そんなことに嫉妬するなんて、そんなにあたいはばかじゃないから、余裕で見ていたわ。

あたいよりも、小猫のほうがたくさん餌をもらったってね。
あたいの座布団を占領したって許してやるさ。
だけど、小猫や、あたいを無視するなんてどういうことだい。
おまえを産んだのはあたいだよ。

こういうの、親の心子知らずっていうのかねえ。
腹を痛めて産んだ子に、自分の幸せかっさらわれちまうなんて、あたいも落ちぶれたもんさ。

でもねえ、人生何が幸いするかわかんないもんだね。
あの家をおんだされちまって、飢え死に寸前でたどり着いたこの家は、お人好しのじいさんばあさんの二人暮らし、いやというほど猫っかわいがりだ。
おや、見慣れない人間がやってきた。
若い女だ。

「みーこや、おねえちゃんがきたぞ」
「おじいちゃん、みーこはまた、えらい太ったねえ。
まーんまるじゃないの」
「にゃーん(失礼な女だね)」
「ん?みーこ、おめでたですかー?」


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