解ってはいるさ
判ってはいる
安心を拒絶した途端、生ぬるい夏の海水のように腋(わき)の下へとの浸透が
それらが暗紅色に混ざり合いながら、左側をチクリ、と刺し続けることすらも
絡(から)め獲られ、せめて粘々(ねばねば)なカラメルのように唇を噤(つぐ)むしかないことも
目の前を色んな質草が飛び交っている。
嗚呼、結婚もあったんだっけな、子供も造れるんだっけな、ゲームも音楽も映画も、曇天、透けるほどの勿忘草(わすれなぐさ)色の空すらも
1個1個がカプセルの中に入って、ゥヨォ〜ン、ウヨォ〜ン、と長い8の字を描いて飛んでいる
くだらねぇ、という反抗心も、消え去れ!、という激昂も、天才だ、という自賛もカプセルに詰め込もうとした。
カプセルの大群の先はある、先はない、両方ともいえない、答えが要らぬという自己陶酔に惑わされながら、
乾いた口腔の沈黙しか、痛む心臓は欲していない。
執筆者:藤崎 道雪