君はあの日の少女のように小雨の夕暮れに両手で顔を覆いながら泣いていたね
初めて、鮮血のついた痰(たん)を吐いて、その鮮やかなものが僕の体の中にあったのかって、驚いて、それでやっと受け入れられるようになって落ち着いて歩き出し、初めて触れたのが、ストレートの黒髪に純白のワンピースの少女だった
声を掛けようか少し迷ったけれど、少し通り過ぎて、そして声を少しだけかける、そんなつもりだったのだけれど
しくしくとあの少女のように他人の同情を誘うようでもない素振りが、より一層心が今も引き付けられている
もうすっかり封印して、完全に忘れるまで数年もかかったあの少女
僕はやっぱり忘れられなかったのかも知れない
無意識という言葉が今やっと僕の人生の中に現れてきたような気がした
曇天の下、灰色の道路の上でジーンズに白いシャツだけれど瞳の水滴のレンズでぼやけているとすっかりすっかり一緒になる
そういえば、出会いは大学のサークルを探していた日、ちょっと小雨が降っていたっけ。その中で君はまるで、見たこともない大天使のように、仏様神様のように輝いていたんだっけ
「ひどぃ・・・」
君はささやくようにつぶやいた
一緒に入ったサークルで君は明るくて優しくて少し涙もろい、僕にはもったいない、なんて言われる人だった
けれど、僕の愛は絶対に変わらなかったし揺らぐこともなかった
これからも揺るがせてはいけないし変わってもいけないんだ
あの少女との出遭いのように、そして合うべくして会った君への忠誠も
修羅の世界へと引き戻す愛欲、衝動、激情、偶然
私はまた探し続けるのだろう、永遠の愛の対象を
無意識と自覚しても尚、決して抗(あらが)えない贖(あがな)いを
執筆者:藤崎 道雪(校正H18.6.2)