十五夜の満々と輝きを撒き散らす満月 その満月を引き立てるだけの漆黒のような肉体を借りている 北海の弾けるようなオレンジ色の鮭 その鮭を育てるだけのにごって暗い海水のような心を借りている 寒梅の霜を切り裂くような鮮やかな紅白 その紅白を1年も前から隠し持っていた樹木のような魂を借りている 天空と地上と植物、存在とさえ一致する借り物の雄大 雄大の幽玄さと、借財の有限さに、自我の有言さえ