1週間を超える風邪、とうとう喉まで追い詰めた
恨めしいしっぺ返しのように声を奪っていった、朝は何ともなかったというのにハスキー過ぎるボイス
これまで散々、悪寒だの頭痛だのを投げつけては、バスケも活力も奪っていったのに、やっと清々するという所なのに、最後に残ったボイス砦
生来の高音でまくし立て、合理的判断と論理性でぶっちぎって友達の居なくなった小学校、馬鹿馬鹿しくなって見下げるようになった中学校、逆にもてない言い訳にしていた高校生、もてるためにわざとハスキーにしておっとりのしゃべり方にした大学生、同性にセクシーボイスが聞けなくて残念といわれる社会人
目をスクッと閉じて口先を動かせば、他人のような動物のようなかすれた声と動作の醜さが、僅かな痛みを伴って
初めて自己改造をした成人の頃を、もどかしくて何度も引き返そうとした感覚を、こんなのでもてても仕方がないという過ぎ去った遺物が心に蘇ってくる
意図的に変化させた私など私ではない、変化させられた私など私ではない、そんな豊かさゆえの傲慢な問いに心が満たされていた平和な頃であった、無知な無智な無恥な時代であった
稚拙な恋、下手な人付き合い、無駄に繰り返す行動、傲慢と自尊しかない不安定、全てがこの擦り切れそうなハスキーボイスに詰め込まれているよう
音程の1つ、3秒もでやしないハスキーボイス
何百回も口ずさんで来た名曲さえ、半分も音が出ないボイス
このボイスが私の声であった
これからも声の奥底には隠されている
成人の頃に出していた、その声、ハスキーボイス