柔肌、つるりとしてスベスベで幼児のような
声色、抑え目なそれでいて張りが心を捉えて放さない
紅唇、小さくてネクタイのように発色のよい少し尖った
黒髪、林の木陰のような落ち着きを感じさせるサラサラとした
全てが、その全てがたった、全宇宙に比べて極微弱な人の一生の半分にも、いや3分の1にも満たない時の流れで洗われて逝ってしまう
だから愛して欲しいの、と
けれど愛して欲しいの、と
しかし愛して欲しいの、と
現在だけを想う時人は満たされる、とある人はいう
未来を持つだけで人は幸せになる、とさる人はいう
過去を忘れない人だけに己がある、とその人はいう
3掛ける3で9通りの答えが導き出される
どれに当てはまろうとも、どれに当てはまらなくとも
そっと目を閉じて、己の狂気を静めるだけなのだ
あの愛して欲しいの、という人との別れがきっかけとなった
一気に噴出(ふきだ)して小さくとも無限の心の世界に広がっていく
けれども、この狂気に本当はあの人は全く関係がなかった
ただ、あの人はきっかけに過ぎなかったし、側にいてくれる人なら誰でも良かったのだ
だから愛していたのだ、と
けれど愛していたのだ、と
しかし愛していたのだ、と
きっかけに過ぎなかったとしても、それが真実の愛であるから それだけが愛という名に値するものだから
真実の愛に気づかない人、いつも取り戻すようにしている人、偽りの愛の幻想に抱かれるだけの人、私に気がつくきっかけを与えてくれたあの人
スベスベで張りのある少し尖りサラサラとした、あの人への愛があった