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「 あの人への愛 」
2008年01月17日(木)


 柔肌、つるりとしてスベスベで幼児のような
 声色、抑え目なそれでいて張りが心を捉えて放さない
 紅唇、小さくてネクタイのように発色のよい少し尖った
 黒髪、林の木陰のような落ち着きを感じさせるサラサラとした

 全てが、その全てがたった、全宇宙に比べて極微弱な人の一生の半分にも、いや3分の1にも満たない時の流れで洗われて逝ってしまう
 だから愛して欲しいの、と
 けれど愛して欲しいの、と
 しかし愛して欲しいの、と

 現在だけを想う時人は満たされる、とある人はいう
 未来を持つだけで人は幸せになる、とさる人はいう
 過去を忘れない人だけに己がある、とその人はいう

 3掛ける3で9通りの答えが導き出される
 どれに当てはまろうとも、どれに当てはまらなくとも
 そっと目を閉じて、己の狂気を静めるだけなのだ

 あの愛して欲しいの、という人との別れがきっかけとなった
 一気に噴出(ふきだ)して小さくとも無限の心の世界に広がっていく
 けれども、この狂気に本当はあの人は全く関係がなかった
 ただ、あの人はきっかけに過ぎなかったし、側にいてくれる人なら誰でも良かったのだ

 だから愛していたのだ、と
 けれど愛していたのだ、と
 しかし愛していたのだ、と

 きっかけに過ぎなかったとしても、それが真実の愛であるから それだけが愛という名に値するものだから
 真実の愛に気づかない人、いつも取り戻すようにしている人、偽りの愛の幻想に抱かれるだけの人、私に気がつくきっかけを与えてくれたあの人
 スベスベで張りのある少し尖りサラサラとした、あの人への愛があった


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