箒木の
大樹へ暮れゆく
老いとてゆけど
付記:帚木は「ほおきぎ」アカザ科の植物、と
「ははきぎ」と読み、遠くから見れば箒を立てたように見えるが、近寄ると見えなくなるという伝説の木を指す。『古今和歌集』の坂上是則の歌「園原や伏屋に生ふる帚木のありとてゆけど逢はぬ君かな」がある。
文意は、「箒木が夕暮れで陰を伸ばして大樹になっていく。私もそのように老いていくのだなぁ」という意味。つまり、
「老いとは、箒木の実態と陰の大きさ(虚勢)のズレが生じることを意味し、それを夕暮れ時のように詠嘆(えいたん)して眺めるだけで、ズレを埋めないこと」を意味する。「老いれば深い感動が生まれるが、その感動は、実態と虚勢のズレによって生じる」という意味。
帚木(ははきぎ)が箒に見える虚勢は「近づいても逢ってくれない人、逢えそうで逢えない人の喩え」になり、それをこの詩で「近づいても素晴らしさが見えない人、素晴らしそうで素晴らしくない人の喩え」と置き換えた。嘆く、だけなのか、という岐路に立っている気持ち。